偏差値ってどうよ?(江頭教授)
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いえ、「人の価値は偏差値なんかじゃ計れない!」とか、そんな事を言いたいわけではありません。
試験の点数など、全体のなかで自分がどのぐらいの位置にあるのか、単純に点数だけでは分からない。それはその通りです。例えばテストで70点をとったとしましょう。そのときの試験はひどく難しくて他の人がほとんど70点以下だった、というなら相対的に非常に良い点だった、ということになります。一方でほとんどの人が100点をとれる簡単な問題ばかりの試験だったとしたら70点は悪い成績ということになります。なるほど点数だけでは情報が不足している、試験の難しさを補正した指標が欲しい。これは納得できます。
そこで、偏差値というものが使われているのだと思うのですが、偏差値の定義では「平均が50」で「標準偏差が10」になる様な補正が行われています。これってどうなんでしょう?というのが今回のお題です。
まず、理系の人間として言わせてもらうと、50とか10とかが気に入らない。「平均が0」で「標準偏差が1」が適切ではないでしょうか。「0以上なら平均以上」「0以下なら平均以下」きわめてシンプルです。「正規分布なら-1~1の間に68%が入る」などすぐに理解できます。今使われている偏差値も理系の人は「偏差値30ってことは平均より下2σか、こりゃなかなかだぞ」という風に頭の中で変換しているのでは。
「偏差値2か、凄いじゃないか!」とかいわれてもピンとこないとか、「あなたの偏差値はマイナスです」と言われると立ち直れない気がする、というのもわかります。実際、現在の偏差値の定義では、ほとんどの人の偏差値は30から70に収まることになるので、なんとなく100点満点のテストの点の様な数字になります。でも、というか、だからこそ私には良くない様に思えます。だって、テストで平均点が50点って低すぎじゃありませんか?70点以上とれるひとが2.3%(50人学級で1人くらい)というのもかなり極端なように思えます。
実のところ、「平均が70」で「標準偏差が10」ぐらいが精神衛生上一番良いのでは。これなら大部分のひとは50から90の間で、たまに(769人に1人くらい)100越えの天才がいる、ということになります。
偏差値が定義され、現在のように広く使われるようになった経緯について、私は知らないのですが、偏差値の点数が100点満点の試験の点数とよく似ていて、試験の点数のメタファーとなっているという点が意識されていたのではないかと思います。しかし、偏差値は試験の点数とよく似ているのに平均の位置という点で明らかに異なっている。これは似ているからこその問題ではないでしょうか。
さて、偏差値は試験の点数と似すぎている、とすればどんな数値で代用すれば良いのでしょうか。一番のおすすめは「平均が0」で「標準偏差が1」です。もっとも、何かのメタファーとなっていた方が分かりやすい、というのではれば「平均が3」で「標準偏差が1」はいかがでしょうか。通信簿の5段階評価を思い起こせば腑に落ちると思います。
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