「偏差値100」はどのぐらい凄いのか(江頭教授)
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昨日のブログでは偏差値について
偏差値の点数が100点満点の試験の点数とよく似ていて、試験の点数のメタファーとなっている
割には
平均の位置という点で明らかに異なっている。
という点が問題ではないか、と述べました。
今日のお題はその続きで、試験の点数と偏差値とで分布がどのくらいずれているのか、もっと単純に言うと試験で100点をとるのと偏差値100を取るのはどのくらい難しさが異なるのか、というお話です。
「きちんと勉強していれば試験で100点が取れるはずだ!」という意見はともかく、試験で100点をとることはまあ、不可能ではないでしょう。では偏差値100はどうか?
成績の分布が正規分布になっていると考えると偏差値60以上は約16%ほど。偏差値70になると2.3%ぐらいです。
偏差値80はどうでしょうか。上位0.13%で、700~800人に1人、という計算になります。これが偏差値100になると350万人に1人、という確率に。これはなかなか達成できないのではないでしょうか。日本の受験生の総人数が100万人程度という実情を考えると偏差値100の成績優秀者は数年に一度の逸材。目指すとか目指さないとかのお話ではないでしょう。
こうしてみると「100点を取るように頑張りましょう」というのは励ましのメッセージですが、「偏差値100を目指して頑張ろう」は単なるイヤミになってしまいます。
さて、以上は得点の正規分布を仮定した議論でしたが、では、得点が正規分布にならない場合はどうなるのでしょうか?
極端な場合を想定して自分だけが100点、他の人が全員0点だった、という試験があったとします。その場合の偏差値はいくらになるのでしょうか。
まず、自分1人だけだったとすると自分の得点=平均点なので偏差値は50になってしまいます。2人だと平均点は50点、標準偏差も50となって偏差値は60。3人なら64.1となって、という調子で人数が増えるほと偏差値は上がってゆきます。自分は100点なので、比較される0点の人が増えるほど自分の特別さが際立つ、と言えば良いでしょうか。この調子で全体の人数が26人、つまり自分だけが100点で他25人が全員0点だとすると偏差値は100となります。
実は他の人が全員99点で、自分だけが100点でも偏差値は100、逆に自分が1点しかとれなくても他の25人が0点なら同様に偏差値100となります。
現実的なシチュエーションを想像してみると、26人クラスで先生の出した難しい問題に自分だけが答えられた、という状況なら偏差値100もあり得る、ということですね。でも、だから何なの、という気もします。この場合クラスで自分がダントツなのは明白ですし、試験の難しさを補正した指標、という偏差値の本来のありがたみも感じられないのではないでしょうか。
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