再生可能エネルギーのインパクトはどのくらい?(江頭教授)
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先日の記事で2017年(これが最新版です)の日本の温室効果ガスの排出量について紹介しました。温室効果ガスの排出量は4年連続の減少で、その主な原因はエネルギー起源のCO2の排出量の減少です。今回の結果が特徴的なのは2017年度には前年度比でエネルギーの消費は増えたにもかかわらず、CO2の排出量は減少したという点でした。(それ以前の3年間はエネルギー消費自体が減少していました。)
エネルギーをたくさん使ってもCO2排出が増えない、ということは再生可能エネルギーなど、化石燃料以外のエネルギー源が増えたということでしょう。
ということで今回は再生可能エネルギー の普及状況について。まずは代表的な再生可能エネルギーである太陽光発電の世界での導入量。元データはエネルギー白書2019から取りました。
エネルギー白書2019より【第222-2-11】世界の太陽光発電の導入状況(累積導入量の推移)
なお、エネルギー白書2019には注釈として「出典:IEA「PVPS TRENDS 2018」を基に作成」とある。
どんどん導入量が増えている様子が見て取れます。では、再生可能エネルギーのもう一つの代表である風力はどうでしょう。
エネルギー白書2019より 【第222-2-12】世界の風力発電の導入状況
なおエネルギー白書2019には注釈として「出典:Global Wind Energy Council (GWEC)「Global Wind Report(各年)」を基に作成」とある。
こちらも順調に増加していますね。
このほかにもバイオマス発電などが再生可能エネルギーと分類されていますが、いずれも大気中の二酸化炭素を増やさない(か、化石燃料に比べてごくわずかしか増やさない)エネルギー源であり、これらの再生可能エネルギーは近年急速に導入量が増えています。
なるほど「世は正に大 再生可能エネルギー時代!」という印象です。では他のエネルギー源とくらべてこれら(水力以外の)再生可能エネルギー源はどのくらいの存在感があるのでしょうか。
これもエネルギー白書2019のデータを見てみましょう。
エネルギー白書2019より【第221-1-3】世界のエネルギー消費量の推移(エネルギー源別、一次エネルギー)
なおエネルギー白書2019には注釈として「出典:BP「Statistical Review of World Energy 2018」を基に作成」とある。
と、このような状態で、全一次エネルギーに対して再生可能エネルギーの占める割合はまだ3.6%に過ぎません。化石エネルギーも石炭はやや消費に陰りが見えますが、化石エネルギー全体としては抑制どころか未だに増加が続いている、というのが世界の現在(正確には2年前ですが)の姿です。再生可能エネルギーの導入が進んでいる、とは言っても世界的に見ればまだまだ「導入が始まった」程度の段階にある、というのが実情。再生可能エネルギーの存在感を持つのはこれからの様です。
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