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ヨーロッパの熱波(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 以前このブログでオーストラリアに出張して40℃越えの環境で野外作業することになった、という経験を紹介しました。要は暑さ自慢だったのですが、そもそもオーストラリアの内陸部は乾燥地、いわゆる砂漠で夏には40℃を越えることも珍しくありません。今年の夏は後半に結構暑い日が続き、私がたまたまそのタイミングで出張した、というのが実情。現地の人々は、大変だよ、とこぼしてはいましたがそれほど深刻な事態、という様子ではありませんでした。

 ところが最近のニュースによれば、今年のヨーロッパの熱波は少し様子が違うようです。フランスでは40℃どころか45℃を越える気温。これは観測史上最高気温だ、というほどに暑いのだそうです。

 聞けばヨーロッパは2003年にも熱波を経験していて、その際には農作物の不作などの経済的な影響に留まらず熱中症による死者も少なからずあったと言います。その時点で1540年以の熱波と言われていたのですが、たった16年後の2019年にその記録が塗り替えられるかも知れない、という事態になっているのです。

 さて、このような熱波にはどのような対応を取るべきなのでしょうか。

 

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 こんなに頻繁に熱波が来る、というのは地球温暖化が原因だろう。ということは温暖化対策は待ったなし。今すぐ温室効果ガスの排出を止めよう!

 うーん、熱波の原因が気候変動だ、というのはおそらく正しいと思います。ただ、今現在、温室効果ガスの排出を止めたとしても熱波を防止することはできないのではないでしょうか。日々の天気は移ろいやすいとしても気候が構造的に変化するには長い時間が必要だ、ということは昔から言われていることで、だからこそ早めの対策、継続的な努力が必要だ、とされてきたのです。熱波の到来など今起こっていることはかつての人間活動の結果であって、今の我々がどうこうできる部分は少ない。すでにやってしまった事の結果は事実上回避不可能であるという点で天変地異と差が無いとも言えるでしょう。

 そうなれば「熱波が来る」ということを前提に対策を立てるしかありません。考えられることはいろいろあります。

 熱波が来ても大丈夫な様にクーラーを設置する、といった個人での備え。熱波が来ているとき、無理に屋外で作業をしない。など、社会としての対応。高温に耐えられる作物の導入など事業者レベルでの対策。熱波の到来をなるべく早く正確の予測するための国レベルでの対応など。

 これらは気候変動に対する「適応」と呼ばれています。温室効果ガスの排出を抑える対策は気候変動の「抑制」と呼ばれますが、「抑制」と「適応」を平行して行うのが現実的な対応でしょう。

 

 

江頭 靖幸

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