おもちゃとしてのライターボンベ(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
100円ライターが普及したためでしょうか、最近はライターは使い捨ての安価なもの、という感覚の方が一般的かも知れません。しかし、昔はライターといえども高価なものでしたから使い捨てなどもってのほか。燃料を補給して長く使い続けるのが一般的でした。
では、どうやってライターに燃料を補給するのか。ライターの燃料は室温で気化する必要がありますから、ある程度高い蒸気圧(低い沸点)の物質でなければなりません。とはいえ常温で完全に気体となるようでは小さなライターの本体に充分な量を蓄えることができません。圧力を高くすると漏出の恐れもありますからね。ですから、ライターの燃料には適度な圧力で液化するガスが用いられます。これは瓶に入れて保存することは難しいので小型のボンベ、というかスプレー缶のようなものに入れて燃料を販売していました。ライターに逆流防止弁のついた小さな燃料注入口をつけて、そこにスプレー缶の口を押しつけて燃料を注入していたのでした。
これがライターボンベ。要するに、可燃性ガスが加圧、加圧されて封入されたスプレー缶です。
えっ、これがなんで「おもちゃ」なのかって?
それを今から説明しましょう。子ども(というか、子供のころの自分)というものは恐ろしいものでこんなものでもおもちゃにしてしまう、というのが今回のお話です。
加圧されて液化した燃料を大気圧の解放するとどうなるか。急速に気化して気化熱が奪われますから、液の一部は凍結して固体になるのです。ライターの注入口と巧くつなげられなくて燃料が漏れ出すと、このような現象が観察されますが、ライターなしでスプレー缶の出口を押し込めばもっと派手に放出と凍結を観察することができます。
私が子供のころの話、この様子が面白い、といってライターボンベで遊んでいました。放出時には音もしますし熱が奪われて冷たくもなります。なにより一瞬で凍結した燃料には雪の結晶を思わせるような不思議な文様が現れるのですが、それもつかの間。すぐに暖まってガス化し、文様は消えて無くなるのです。
もちろん、これは大変危険な行為です。ガスに引火したら爆発する可能性もありますし、そもそもガス化した燃料(おそらくは炭化水素)のガスを大量に吸い込むことになるのです。
因果応報、こうして遊んでいた私は気分が悪くなってしまいました。何て馬鹿なことを!こっぴどく叱られた記憶があります。
「日記 コラム つぶやき」カテゴリの記事
- 英文字略称(片桐教授)(2019.03.13)
- 地震と夏みかん(江頭教授)(2019.03.11)
- 追いコンのシーズンはご用心(片桐教授)(2019.03.07)
- Don't trust over 40℃!(江頭教授) (2019.03.06)
- 「加温」の意味は「温度を加える」?(西尾教授)(2019.03.04)