「省エネ」と「再エネ」どっちが大切?(江頭教授)
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これは典型的な
「あ! どっちもデス」
案件なわけですが、わざわざこんなタイトルで記事を書こうと思ったのは期末試験の採点をしていて気になってしまったからです。試験問題の詳細はともかく、記述式の問題の解答を読んでいて最近の学生さんは「再エネ」を重視している割に「省エネ」に関心が薄いのではないか、という印象を受けたのでした。
温暖化対策として化石燃料の消費量を少なくしたい。その場合「石油燃料に変わる再生エネルギーを用いれば良い」と解答してくれた人が多かったのに対して「省エネルギー化を進める」あるいは「再生可能エネルギーの導入拡大と同時に徹底的な省エネを」などと解答した人は少なかった。はて、これはどうしたことでしょう。私が学生のころは省エネは世間的にも注目のキーワードだったと思うのですが...。
図はエネルギー白書2019から。再生可能エネルギ-は水力を含めてもまだ一割程度です。
感覚の話で明確な結論も出ないのは承知の上で原因を考えてみましょう。
まず、再生可能エネルギーは目につきやすい。太陽電池、風力、バイオマスなど具体的な絵が頭に浮かびますし、導入割合も0%から100%を目指す数値としてわかりやすい目標となります。
それに比べて省エネルギーはケースバイケース。エネルギーを利用するものがあればそこには必ずそれなりの「省エネ」技術があるはずです。逆に言えば誰もが思い浮かべるような共通の省エネ技術というものはないのでは。目標もハッキリしません。一次エネルギーの導入割合という数字は日本とか世界、それぞれのレベルで一つの数値ですが、省エネの成果は製品毎に、しかも基準の取り方次第で無数の指標があります。「省エネ○×%を達成」と言われても、それ前にも聞いたよ、という感想になってしまいがちです。
そして何より、私が学生だったころにはまだまで省エネへの取り組みが本格化し始めの頃で、省エネは新しいコンセプトでどんどん成果が出ていた時代だったのです。一方、現在では省エネは成果を挙げて社会にしっかりと定着しており、すっかり馴染みの考えになった。つまり省エネは普通のことになったのです。そう考えれば、多くの学生さんが省エネを意識しないのは実は素晴らしいことで、省エネの為に働いた多くの技術者の勲章なのかも知れません。
それに対して再エネはまだまだこれからの技術。再エネが普通のものになるにはもう少し時間が必要でしょう。
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