風力発電だけで日本のエネルギーをまかなえるのか?その2(江頭教授)
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「太陽電池だけで日本のエネルギーをまかなえるのか?」(その1、その2、その3、番外編)と題して太陽電池の可能性について紹介しましたが、前回からは風力発電について同様に「風力発電だけで日本のエネルギーをまかなえるのか?」について考えています。
前回は陸上風力発電について、「NEDO 再生可能エネルギー技術白書 第2版 ―再生可能エネルギー普及拡大にむけて克服すべき課題と処方箋―」に紹介されているポテンシャルの推計データをもとに「設備容量としては290GW(経済産業省)か280GW(環境省)と大きい」のですが「発電量はそれぞれ 80 GW、67GW 」となり「やはり日本のエネルギーをまかなうには足りない」ことを示しました。国土面積が小さく山が多くて平地の少ない日本ではよい風の吹く場所が少ないのでしょうか。
実はさらっと「陸上風力発電」のポテンシャル、と書いたのですが風力発電にはもう一つの大きな領域、すなわち洋上風力発電もあります。今回はこの「洋上風力発電」のポテンシャルについえ考えていましょう。日本の陸地は狭いですが海は広い。海上では風を遮るものも少ないことを考えると有望そうですね。
以下の図が再生可能エネルギー技術白書に示された「洋上風力発電」のポテンシャル。前回の陸上風力発電にくらべると文字通りけた違いに景気の良い数字が並んでいます
前回同様、まずは設備容量の導入ポテンシャルから。経済産業省は15億kW、環境省は16億kWと推計しています。それぞれ、1500GWと1600GW。以前紹介した日本の一次エネルギー国内供給635 GWと余裕で上回っています。
以上は設備容量のはなし。では発電量をみてみましょう。
経済産業省の大きい方の見積もりは 4兆4000憶kWh、環境省の見積もりは 4兆3000憶kWh 。とうとう兆という単位がでてきました。これをW単位に換算するとそれぞれ 500 GW、490GW となります。
これは2017年度の日本の最終エネルギー消費 424 GW と比較して遜色ない値です。ここにきてやっと「再生可能エネルギー」で日本のエネルギー消費を賄える希望が見えてきましたね。
とはいえ、陸上風力発電と洋上風力発電の推算値をよく見てみると「導入ポテンシャル」では洋上風力発電が圧倒している割に「導入可能量」をみるとそれほどでもない、というか洋上風力発電の方が小さくなっています。はて、これは一体…。次回はこの点に注目してみたいと思います。
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