日本人はどのぐらいのエネルギーを使っているのか?(江頭教授)
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人間が文化的な生活を送るためには資源やエネルギーが必要です。その資源やエネルギーを得るためにはどうしても環境への影響を与えてしまう。これが「人間(People)」と「自然(Planet)」との相克であり、そのバランスをとることがサステイナブル工学の一つの目的でもあります。
さて、今回のお題は「人間(People)」はどのぐらいのエネルギーを必要としているのか。具体的にどの程度なのでしょうか。日本を例に考えて見たいと思います。
元ネタは「エネルギー白書」。今回は2019年度版で調べてみましょう。ちょっと眺めるとちょうど良い図がありました。「第2部 エネルギー動向 / 第1章 国内エネルギー動向 / 第1節 エネルギー需給の概要」に以下の図が載っています。実はCOLUMNの中の図なので2017年度のデータですが分かりやすくまとまっています。
図の左側は「一次エネルギー国内供給」右側は「最終エネルギー消費」です。エネルギーは必ずしも使いやすい形で供給されるわけではありませんから途中で変換が必要です。その部分のロスを考えるとエネルギーの供給より消費の方が少なくなるのです。具体的な数値は
一次エネルギー国内供給 20,035
最終エネルギー消費 13,382
単位は1015J、PJ(ペタジュール)だとか。
PJとか言われても凄く大きい、という以外よく分からないですね。そもそも J(ジュール) というのはエネルギーの単位なので、1年分のエネルギー。これは数値も大きくなるのでしょう。1ヶ月あたり、1日あたり、いっそ1秒当たりに換算したらどうでしょうか。単位は J/s つまり W になります。で、換算した結果を以下に。
一次エネルギー国内供給 635 GW
最終エネルギー消費 424 GW
うーん、GW(ギガワット)もでかいなー。G(109 ギガ)は P(1015 ペタ)よりも身近な気がしますけどね。
では日本人1人あたりに換算してみるとどうでしょうか。人口を1億2千万人とすると
一次エネルギー国内供給 5.3 kW
最終エネルギー消費 3.5 kW
という数字になります。
一般家庭の契約電力は20から40Aぐらいだと思います。これは2kWから4kWに相当しますから、「最終エネルギー消費 3.5kW」という数値は家にある電気製品を思いっきり使って到達するかしないかギリギリ、というレベルでしょうか。これが1人あたり、というのですからかなりのエネルギー量だ、と言えるでしょう。
もっとも、個人で使っている分に公共施設や自動車・工場で使われる部分全てを含めたエネルギー量ですから大きいのは当然です。感じ方はひとそれぞれですが、個人的には「それほど大きいわけでもない」と感じるのですが、皆さんはいかがでしょうか。
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