風力発電だけで日本のエネルギーをまかなえるのか?その1(江頭教授)
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以前このブログで「太陽電池だけで日本のエネルギーをまかなえるのか?」(その1、その2、その3、番外編)と題して太陽電池の可能性について紹介しました。今回は風力発電について、同様の考察をしてみたいと思います。
まず、元ネタから。今回は「NEDO 再生可能エネルギー技術白書 第2版 ―再生可能エネルギー普及拡大にむけて克服すべき課題と処方箋―」からのデータを紹介しましょう。クレジットは「独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構[編]」となっています。2014年2月、森北出版から書籍版が出ていますがNEDOのWEBサイトから電子版がダウンロードできます。
さて、この報告書で風力発電のポテンシャルはどう評価されているのでしょうか。まとめの表を以下に引用しました。
表には経済産業省の見積もりと環境省の見積もりが併記されています。経済産業省の見積もりが二つあるのはポテンシャル推計の前提に違いがあるからです。環境省の見積もりと経済産業省の大きい方の見積もりがほぼ同じ値となっていますから、こちらを前提として考えてみましょう。
導入ポテンシャルは経済産業省は2億9000万kW、環境省は2億8000万kWとなっています。つまり、290GWか280GWとなります。以前紹介した日本の一次エネルギー国内供給635 GWと比べると半分弱と、それなりの値です。
さて、以上の議論は設備容量のお話。次はより実用に近い発電量として比較してみましょう。
経済産業省の大きい方の見積もりは 7000憶kWh、環境省の見積もりは 5900憶kWh です。これは年間の値ですからW単位の換算するとそれぞれ 80 GW、67GW となります。
こちらは性質上、日本の最終エネルギー消費 424 GW と比較すべき数値です。大きい方の経済産業省の数値で2割弱。太陽電池のポテンシャルと比較すると大きいですが、やはり日本のエネルギーをまかなうには足りない、というべきでしょう。
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