太陽電池だけで日本のエネルギーをまかなえるのか?その3(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
前々回、前回と「太陽電池だけで日本のエネルギーをまかなえるのか?」について「平成22年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書」を元に考えてきました。今回はこの話に一応の結論を出したいと思います。
まず最初に注意書きをしておきましょう。この話、はじめにでた結論があとでひっくり返る形になっています。結論については、必ず最後まで読んでから判断してください。
さて前回までで、この調査報告書の「レベル3」の「導入ポテンシャル」がいわゆる限界まで太陽光を導入したケースだとみなす、という結論になっていたかと思います。報告書にはもちろん、その結果の数値が示されています。
図には公共施設系の結果がまとめられていますが、数が多いのでしょうか、学校がダントツの数値をだしていて、レベル3で1,600越え。表からデータを拾うと1,679.21となっています。単位は万kWですから17GWです。
他のカテゴリーで大きいもを観てゆくと工場25GW、最終処分場11GWなどがありますが、大物は耕作放棄地で70GWとなっています。全部合計すると 149GW に達します。
以前紹介したエネルギー白書のデータでは日本が使っているエネルギーは一次エネルギー基準で635GW、最終消費エネルギーでは 424GW となっています。149GWでは足りないと言えば足りないのですが、それなりの存在感のある数値ですね。
はい、では最初の注意書きとおり、ここで結論をひっくり返すことにしましょう。
いままで曖昧に「導入ポテンシャル」と読んでいた数値ですが、元のレポートには実は「設備容量」の導入ポテンシャルであることが明記されています。各カテゴリーの細目とレベルに応じて、導入ポテンシャルには「設備容量」の他に「年間発電電力量」も算出されているのです。
太陽電池が発電するには太陽光が必要。雨の日も曇りの日もありますし、そもそも毎日夜があるわけですから、設備の持っている能力の最大値まで常に発電することはできないのです。この辺の事情を考慮したのが「年間発電電力量」となります。
では「設備容量」149GWに相当する「年間発電電力量」はいくらなのでしょうか。報告書には
1,319.53(単位は億kWh/年)
とあります。単位が変わっていてややっこしいのですが h/年 = 1/(24×365.25) なので 0.150億kW、つまり 15GW となります。設備容量のほぼ10分に1しか発電できないわけです。
先に「それなりの存在感」と書いたのですが、635GWや424GWと比べると15GWはいかにも小さい。結論はひっくり返ってしまって少なくとも「非住宅系太陽光発電」だけでは日本のエネルギーをまかなうことはできない、となりました。
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