天ぷら油は充分に有効利用されている、というはなし(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
まず始めにお断りを。今回の記事の内容は私が10年程前に人づてに聞いたお話です。その当時実際のところどうだったのか、現在はどうなのか、私は確認していません。興味深い論点があると思うのですが本当かどうか分からない話だ、という前提で読んでみてください。
という、エクスキューズからスタートしたのですが今回のお題は「バイオマス」について。それも具体的で「天ぷら油」についてのお話です。これは私が本学(東京工科大学)の応用化学科に赴任してくる以前、大阪大学にいた頃に聞いたお話です。
バイオマスのエネルギー利用が必要だ、という観点から使用済みの天ぷら油の燃料化の研究をした人がいたそうです。油はグリセリンと脂肪酸の混合物ですが、これを分解し、脂肪酸から液体燃料をつくる。触媒などの技術開発を行ってテストプラントを準備して、さあ廃天ぷら油で実証試験だ、と思ったのですが廃天ぷら油が思う様に集まらない。これは一体どうしたことか...。
天ぷら屋さんに聞いてみると、天ぷらのお店では一番油を使う店とニ番、三番油を使う店があるのだとか。実は天ぷら油は天ぷら屋さんの間ですでにリサイクル(リユースでしょうか)のシステムができあがっていて廃棄するような油はほとんどない、というのです。
なるほど、と思える話なのですがどこまで本当なのでしょうか。「一番搾り」ならぬ「一番油」の天ぷら屋さんという広告を私は見たことがないのですが(そもそもほとんど天ぷら屋さんに行かないのですが)、もし本当にリユースの仕組みができあがっていたとしたらどの店が何番油を使っているかは秘密になる様にも思えます。それどころかリユースの仕組みの存在自体が秘密でもおかしくないでしょう。
というわけでこのお話、本当かどうかは分かりません。でもこれがもし本当なら前回の「バイオマスだけで日本のエネルギーをまかなえるのか?その1(江頭教授)」の結論の一つ「廃棄物の有効利用を推進してきたからこそポテンシャルが小さい」ということの典型的な例となると思います。天ぷらには油を使うからその廃油を有効に使おう、とエネルギー分野の人が考える以前に天ぷら屋さん自身が有効な使いかたを既にみつけている。こんなことがいろんな業種で起こっていて、その結果として「利用できる廃棄物系のバイオマスエネルギーはほとんど残っていない」のではないでしょうか。エネルギーの観点からは残念なことですが、それぞれの分野から見れば皆がやるべきことをやっている、ということに過ぎないとも言えるでしょう。
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