バイオマスだけで日本のエネルギーをまかなえるのか?その1(江頭教授)
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このブログでは「太陽電池だけで日本のエネルギーをまかなえるのか?」と題して4回(その1、その2,その3,番外編)、「風力発電だけで日本のエネルギーをまかなえるのか?」と題して4回(その1,その2,その3,その4)の記事で再生可能エネルギーのもつ可能性について紹介してきました。今回はバイオマスについて。元ネタは風力発電のときと同じく「NEDO 再生可能エネルギー技術白書 第2版 ―再生可能エネルギー普及拡大にむけて克服すべき課題と処方箋―」のデータです。
「再生可能エネルギー白書」では下の図が日本のバイオマスエネルギーのポテンシャルとして示されています。賦存量が全ての存在量、というかこれは年間での値ですから発生量ですね。そのうちで利用可能なものが図にはオレンジ色の棒グラフで示されています。
未利用系のバイオマスのポテンシャルは合計約530PJ/年、廃棄物系は240PJ/年となります。これをW基準に換算するとそれぞれ約17GW、7.6GWとなります。以前紹介した日本の一次エネルギー国内供給635 GWと比べるとかなり小さな値であり、日本の最終エネルギー消費 424 GW とくらべてもそんなに大きな数字とは言えないでしょう。
うーん、雨に恵まれていて陸地のほとんどを森林で覆われている日本でバイオマスエネルギー小国、というのは何かおかしいのでは。そう思ってバイオマスエネルギーとして挙げられている項目を見直してみると、まず「廃棄物系」は現在の産業や社会生活に伴って排出され、現時点では処理されているバイオマスの有効活用に関するお話。「未利用系」も現状の農業・林業をつづけるなかで回収可能なバイオマス、という位置づけです。そう考えればゴミの減量に努め廃棄物の有効利用を推進してきたからこそポテンシャルが小さい、とい見方もできますね。
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