太陽電池だけで日本のエネルギーをまかなえるのか?番外編(江頭教授)
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ここ数回、「太陽電池だけで日本のエネルギーをまかなえるのか?」と題して「平成22年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書」を元に考えてきました。前回で一応、「非住宅系の建設物への太陽光パネルの設置のポテンシャルは設備容量で150GW程度と大きいが、発電能力は15GW程度。日本で消費されているエネルギー424GWと比較すると見劣りする。つまり、太陽電池だけで日本のエネルギーをまかなうことはできそうもない。」という結論を示したのですが、今回は別の資料を元に同様の考察をしてみたいと思います。
今回の元ネタは一般社団法人「太陽光発電協会」が公表している「JPEA PV OUTLOOK 2050 “太陽光発電 2050 年の黎明”」という資料です。ここで示されている導入量予測は「ポテンシャル」よりは現実的な数値ではあるものの、2050年というやや遠い未来への展望でもあるため理想的なシナリオに基づく予測、という位置づけになると思います。
この2050年のビジョンを検討するまえに、まず現状としてあげられている2015年のデータを見てみましょう。
2015年時点でに導入された累積稼働容量は32GWとかなりの数値です。ただ、発電量は 343億kWh(正確にはkWh/y)であり、単位を換算すると約4GWとなります。日本の全エネルギー消費に比べると約1%。まだまだ少ないことが分かります。
さて、2050年の予測どうでしょうか。
同じ表から 容量は 200GW、発電量は 2,450億kWh となっています。発電量の単位を換算すると 28GW となり、現時点での日本の最終消費エネルギー424GW の 6.6% です。
前回示した15GWというポテンシャル評価と比べると倍となりますが、これは住宅系の建物への太陽光パネルの配置、メガソーラーなどを含む値であるためでしょう。ただ「JPEA PV OUTLOOK 2050」では「容量200GWは通過点である」と明言されているので太陽電池にはさらなる可能性がある、という立場です。
この数値をどう見るのか。太陽光発電が非常に有望な再生可能エネルギーであることは明かですが、そもそもの問である「太陽電池だけで日本のエネルギーをまかなえるのか?」に対しては、この結論からはYESとは答えにくいかな、というのが私の感想です。
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