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サステイナブルな社会は「楽しい」か?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

「地獄に行くのはいやだけど、でも天国に行ったら行ったで天国の生活ってすごくつまらないのでは?」

 どこの誰が言ったことなのか、そのときは気にとめていなかったので全く覚えていないのですが、最近ふと思い出した言葉です。天国がどんなところか、そもそも天国の存在について懐疑的な私にとってはどうでも良いことで、言われてみると余りまじめに考えたことがありません。そう言えば同じように「楽しい」のか「つまらない」のか、について考えたことがなかったものがあったっけ。そうです。「サステイナブル社会」は「楽しい」のでしょうか、それとも「つまらない」のでしょうか。「サステイナブル社会」を目指して「サステイナブル工学」を研究している身としては少しまじめに考える必要があるでしょう。

 我々が知っているサステイナブルな社会は産業革命以前の世界であって、ヨーロッパではいわゆる「中世の世界」、日本だったら「時代劇の世界」でしょうか。物語の中では楽しそうですが(そりゃそうだ)、でもその実態は悲惨な生活でだったということ少し調べればわかること。どうやらこちらのサステイナブル社会は「楽しい」どころではないようです。

 近代化という現象、もっと具体的に言えば産業革命の成果を取り入れること、はこの悲惨なサステイナブル社会を打ち壊すことでした。サステイナブル社会というより、「旧態依然の体制」とか「因習にとらわれた生活」などと認識されていた社会のシステムを壊すことで新しくてよりよい生活が実現したわけです。この記憶から革命や革新、変化することは良いことだ、という考えと同時に変化しない社会は良くない、という考えが生まれたのでしょう。

 さて、現在にもどって我々が目指す「サステイナブル社会」について考えてみましょう。

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 サステイナブルであるためには「サステイナブル社会」はある面では変わらない社会でなければなりません。全人類のエコロジカルフットプリントは地球一個分以下に抑えられているし、特定フロンを自由に生産することもできず、原野を勝手に切り拓くこともできません。なんと不自由な!「サステイナブル社会」では個人の自由は制限されざるを得ないのです。これはサステイナブル社会は自由な社会ではない、ということでしょうか。

 「健康に気をつけて暴飲暴食を控えろ」ということと同じで「暴飲暴食ができないなんて不自由だ!」というのは、まあ無理筋というものでしょう。確かにサステイナブル社会で人間ができることには制限が加えられることになりますが、来たるべき社会に暮らす人々はこの制限を受け入れる必要があるのです。そして、おそらく未来の社会人はごく自然にこの制限を受け入れるのではないでしょうか。そうであればサステイナブル社会に住む人々は「楽しい」かはともかく「満足」だと思ってくれると思います。(とは言え自分自身が「暴飲暴食を控える」という制限を必ずしも守れていないことを考えると、この結論は少し人間性というものに期待しすぎなのかも知れません。)


 

江頭 靖幸

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