バイオマスだけで日本のエネルギーをまかなえるのか?その2(江頭教授)
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今回の記事、少し間が空きましたが「バイオマスだけで日本のエネルギーをまかなえるのか?その1」の続きです。こちらの記事では「NEDO 再生可能エネルギー技術白書 第2版 ―再生可能エネルギー普及拡大にむけて克服すべき課題と処方箋―」のデータを基にして、未利用系のバイオマスや廃棄物系バイオマスのポテンシャルが日本の一次エネルギー国内供給や最終エネルギー消費 424 GW とくらべてかなり小さな値であることを指摘しました。「ゴミの減量に努め廃棄物の有効利用を推進してきたからこそポテンシャルが小さい」という見方もできる、というのが結論でした。
では、バイオマスを積極的に生産する、という手法はどうでしょうか?「再生可能エネルギー技術白書」にはIEAがとりまとめた世界のバイオマスポテンシャルのデータが示されています(下図) 。技術的なバイオマスポテンシャルは50~1500EJ(エクサジュール、1018J)/年とされています。かなりの幅があるのですがこれは廃棄物・未利用系に限った推計と積極的なバイオマス生産も含めた推計とが一緒にまとめられているからだそうです。このうち、持続可能なバイオマスの利用ポテンシャルは200~500EJ/年となり、2050年に予想される世界のエネルギー需要を満たすには不足するものの、最大で5割を賄う能力がある、としています。
以前、「天ぷら油は充分に有効利用されている、というはなし)」、「天ぷら油は充分に有効利用されている、というはなし」のその後のはなし」という記事でも触れたのですが、バイオマスは風力や太陽光など発電とは異なって容易に輸送可能な液体燃料の形で利用できるエネルギーです。そう考えると、なにも国産のエネルギーにこだわる必要はなく、広く世界にエネルギー源を求めるのが適切なのだと思います。
将来のバイオマスの世界的な市場が立ち上がれば、日本はバイオマス由来の液体燃料を海外から輸入しすることで航空機などの一部のエネルギー需要を満たす。そんな未来像もありうると想像するのですが、いかがでしょうか。
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