「人口ピラミッド」ってどうよ(江頭教授)
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まず「人口ピラミッド」について、Wikipediaの記述(2019年11月5日閲覧)を見てみましょう。
人口ピラミッド(じんこうピラミッド)とは、男女別に年齢ごとの人口を表したグラフのことである。 中央に縦軸を引き、底辺を0歳にして頂点を最高年齢者として年齢を刻み、左右に男・女別に年齢別の人口数または割合を棒グラフで表した「年齢別人口構成図」のこと。
なるほど。人口ピラミッドは正式には「年齢別人口構成図」というのか。
通常は、出生数が多く、死亡等により、だんだん年齢を重ねていくうちに人口が少なくなる。このため、三角形のピラミッド状の形になることから、こう呼ばれる。
たしかに、下に引用した1965年の日本の人口ピラミッドは「ピラミッド状の形」になっています。ただ、20歳を中心とした「団塊の世代」の人数がかなり多くなっているためにちょっと不安定なピラミッドになっていますね。
さて、「年齢別人口構成図」がピラミッド型になる原因、先の説明では「出生数が多く、死亡等により、だんだん年齢を重ねていくうちに人口が少なくなる。」とありますが、後半の死亡による人口減少の効果でピラミッド型になるものでしょうか。少なくとも1965年以降の日本の様に平均寿命の長い国では、図のかなり上の方、おもに老齢人口の部分にしか死亡の効果は現れないと考えられます。そのような国ではピラミッド型となる原因は前半の出生数が増えているから、という部分が主であるはずです。
出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ (http://www.ipss.go.jp/)
逆に死亡が原因でピラミッド型になるとしたらどんな状況なのでしょうか。グラフの頂点、つまり人間の最大の寿命が100歳だとしたらある年に生まれたこどもが100人いたら、一年にひとりずつ亡くなって100年間で0人になる、ということになります。小学校6年間で同級生の6%が亡くなる。16.6人に一人が亡くなるということですから少人数制のクラスでも小学校のうちに一人か二人の同級生のお葬式がある、という感じでしょうか。二人の兄弟がいたら50歳までにどちらかが亡くなっているのが普通、という言い方もできます。人が年齢にかかわらずランダムに亡くなる、ということなのですから老化以外の何かが主な死因となっている社会なわけで、かなり過酷な状況が予想されます。
こう考えるとまっとうな社会で「年齢別人口構成図」がピラミッド状に見えるのは出生数が増えているからだ、としか考えられません。人口増加が続いている社会、つまりサステイナブルでない社会だから「人口ピラミッド」になるのです。要するに「年齢別人口構成図」が「人口ピラミッド」と呼ばれていること自体がいままでの社会がサステイナブルではないことの反映だ、ということなのですね。
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