後進国?発展途上国!開発途上国!!(江頭教授)
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前回の記事では「日本はすでに先進国ではない」「このままでは後進国になってしまう」という言説について私の考えを述べたのですが、「先進国」はともかく「後進国」という表現、最近は使わない表現です。いつのころからか「後進国」は「発展途上国」と言い換えられています。
「発展途上国」は英語では "developing country"です。
"developing country"がdevelopを完了して"developed country"になる
こう考えるとわかりやすいですよね。でも
「発展途上国」が発展を完了して「先進国」になる
というのはしっくりきません。発展したからといってほかの国より「先」になるわけではありません。英語での表現は一つの国のdevelopの前と後とを表現しているのに対して、やっぱり「先進国」という表現のもっている他との比較で「先」という感覚が「発展途上国」とは釣り合わないのでしょう。
いっそ、「先進国」をやめて「発展完了国」と言い換えればどうでしょうか。
「発展途上国」が発展を完了して「発展完了国」になる
となって明快ではないでしょうか。
さて、具体的に発展途上国はどの国なのか。そう思って見つけたのが上の地図です。
どうやら最近は「発展途上国」ではなくて「開発途上国」と呼ぶようです。加えて「特に開発が遅れてている国」を区分して示しているのですが、これは英語では "least developed country" (図の中では "Latest developed countries” とありますが誤記だと思います)です。これだと
"least developed country" がdevelop し始めて "developing country"を経て"developed country"になる
とつながってわかりやすいですね。日本語なら"least developed country"を「未発展国」とでも言い換えて
「未発展国」 が発展し始めて「発展途上国」を経て「発展完了国」になる
となるでしょうか。
さて、このような表現の背景にあるのは「発展」というものが一つの国が変化してゆく段階を示している、という見方です。子供が大人になる、といったイメージ。一方「先進国」「後進国」という用語は多くの国が競争しているイメージで、あたかも駅伝の第一集団が「先進国」でそれ以降が「後進国」とでも言いましょうか。
国の発展を競争のイメージでとらえる、というのはどうでしょうか。競争には必ず勝者と敗者がいます。そうなるとすべての国が発展して幸せになることはできない、という結論になっていまうのですが…。
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