「ユーチューバーってサステイナブルかなあ?」(江頭教授)
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共同研究の打合せが終わって飲み会に行ったときのお話。最近の若い者は、という訳ではありませんが「今年の子供のなりたい職業ナンバーワンはユーチューバーだって」という話がでました。そもそもユーチューバーは職業なのかね、とか、ユーチューバーになりたいなら今すぐ配信を始めるべきだ、いやいや本当に人気なのは公務員だ、などなどひとしきり盛り上がったのですが、はてこの話は本当なんでしょうか。
すこし調べると「ソニー生命」が出している「中高生が思い描く将来についての意識調査2019」というニュースリリースが見つかりました。その中の中学生を対象とした調査で将来なりたい職業の男子の部の第一位が「YouTuberなどの動画投稿者」となっています。
うーん、これはいかがなものでしょうか。「馬鹿なこと言ってないで将来のことを真面目に考えろ」と片づけたい気もしますが、それでは「昭和のおやじの繰り言」になっていまうので、少し現代的味付けをしましょう。「ユーチューバーってサステイナブルかなあ?」
まず、今の中学生が職業人として活動するのはこれから10年後から60年後くらいの期間だと思います。今から60年後、2080年にYoutubeはあるのでしょうか?意外とあるかもしれない、という気もしますがたとえそうだとしても今と全く同じ存在感を持っているとは考えにくい。その場合、ユーチューバーが生活を維持できるほどの収益を上げられるような仕事になるのでしょうか。そもそもユーチューバーの収益基盤はYoutube、というか Google の運営方針如何で突然消滅してしまうような脆弱なものです。そのことを考えるとユーチューバーという職業は持続可能ではない、つまり、サステイナブルではないのでは、と思ってしまいます。
さて、飲み会が終わって駅まで歩いてゆくと路上ライブをやっている若者が。そういえば路上ライブは昔からあったような。歌という形で自分を表現して、それを多くの人に知ってもらう。そしてできれば収益を得よう。そう考える若者は昔からいました。そしておそらく60年後もいるのでしょう。
中学生が男子が選んだ「YouTuberなどの動画投稿者」という将来像は、本質的には路上ライブをやっている若者と共通するものなのかも知れません。ちなみに女子が選んだ一位は「歌手・俳優・声優などの芸能人」だそうです。こちらも根底にある、自己表現で生きてゆく、という点では共通しています。自己表現で暮らしてゆけるかどうか、多くの人にとってそれは不可能なことで、その人達にとってはサステイナブルではない将来目標となってしまいます。でも本人がそれにチャレンジしてみたいと希望するなら、チャレンジする権利はある。これはサステイナブル云々とは違う次元のお話でしょう。まあ、昔からある話なのですが、自己表現で生きてゆくことが「YouTuberなどの動画投稿者」という形で表現されているのが今風で、少し面食らってしまったところです。
でも僕はやっぱり「馬鹿なこと言ってないで将来のことを真面目に考えろ」 と言いたいなぁ。まあ中学生にそれを言うのは野暮な話ですけどね。
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