炭素固定に役立つ植林とは(江頭教授)
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昨日の記事では「森林火災が起こって二酸化炭素が放出されても、もう一度樹木が成長すれば同じ量の炭素が固定される」という話を書きました。この要約の後半、樹木が成長すると大気中の二酸化炭素が固定されて減る、という点に注目してみましょう。つまり植林による二酸化他の固定というわけですね。
森林火災で植生が失われた土地に植林をするのはどうでしょうか。今までも木が育っていた場所ですから巧く木を育てることはできるでしょう。でも、このような土地では自然の状態でも木が生えるはず。その速度を早くするのが植林という位置づけで、無駄とは言いませんが長期的に考えると育った樹木が丸々プラスになるわけではありませんね。
では森林火災以外の理由で植生が失われた土地を植林したらどうでしょうか。産業革命以降に大気中に放出された炭素、実は化石燃料の燃焼だけではありまあせん。大気中に放出された炭素の約3割が土地利用の変更、つまり「森林を切り開いて農地にした」とか「この町は昔は鬱蒼とした森林だったんだよ」とかが原因なのです。
じゃあ農地をつぶして植林しましょう、とか、街を植林のために明け渡そう、ということになるでしょうか。いくら何でもそれは無理でしょうね。
さあ最初のタイトルに戻りましょう。「炭素固定に役立つ植林とは」どんな植林でしょうか。
答えは簡単で今まで木の生えていなかったところに植林することです。でも「木が生えない」ところに「木を植える」ということは、ただ植えただけではダメだということでもあります。無理があることを何とかしないといけない、何らかの技術が必要なのです。
例えば乾燥地の植林。乾燥地は「自然には木が生えないところ」の代表です。そして木が生えない理由も明白で水が少ないから。この問題を解決すれば森林のなかったところに新たに森をつくって、その分の炭素固定ができるわけです。
この理屈を私が聞かされたのは、実は20年以上前のことでした。化学工学会(当時は化学工学協会)の中で温暖化問題が議論され、そのなかで有望な解決策とされたのが乾燥地など陸地の生態系を利用した炭素固定だったのです。この流れはその後実際の研究プロジェクトとして乾燥地植林の実験が行われました。場所はオーストラリアの内陸部の沙漠です。どんな工夫で「木が生えない」ところに「木を植え」て、「木を育てる」ことが出来たのか、それについてはまた次の機会にしましょう。
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