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書評「実験レポート作成法」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今回紹介する本は Christopher S. Lobban と MarLa Schefter の著作で Cambridge University Press から1992年に出版された

Successful Lab Reports: A Manual for Science Students

の日本語版、畠山 雄二、大森 充香 の訳による


「実験レポート作成法 」(丸善出版 2011)


です。

 本書のイントロにも述べられている通り、論文の書き方と言った本はたくさんあるのですが、理系の学生が書く実験レポートに特化したテキストは珍しいと思います。この本はまさにそこが特徴。レポートの書き方をイントロダクション(導入)から始まって材料と方法、結果、考察の様に段階を追って説明しています。

 

 

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 さて、肝心の内容ですが、まず「下書きをすること」が大前提です。先に紹介した「イントロダクション」「材料と方法」等はじつはそれぞれの下書きのこと。下書きをまず書いてそれを見直してから本番のレポートをまとめるというノウハウが本の構成そのもので表現されているのですね。

 それ以外にも実験の結果をどのように表現するべきか、表が良いのかグラフを示すのが良いのか、それとも文章で触れれば良いのか、など分かりやすく説明されています。

 また、結果と考察を明白に区別することの有用性など、色々参考になりました。

 とはいえ、翻訳版はともかく、原著の出版が30年近く前であること、そもそも元は英語のレポートを前提としていること、さらに本書が想定している読者が生物系の学生である点などから、応用化学の人間である私には違和感を感じる部分もありました。

 例えばレポートの構成の原則として紹介されている「IMRAD」について。最初の I は Introduction、終わりの RAD は Results And Discussion は良いとして M って何だろう。実は Materials and Methods なのですが、化学では普通は Experimental ですから、「IERAD」となるところですね。

 他にも図や表の扱い。本書ではレポートの最後にまとめてつけるというスタイルを推薦しているのですが、現在では本文中に入れるのが普通だと思います。

 少々文句が多くなりましたが、参考となる部分も非常に多い本です。全部で100ページ程度の手軽に読める内容ですので、一度手に取ってみては如何でしょうか。

 

江頭 靖幸

 

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