乾燥地に植林する方法(江頭教授)
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オーストラリアの内陸部の沙漠で、どんな工夫で「木が生えない」ところに「木を植え」て、「木を育てる」ことが出来たのか、前回の記事はそれが引きになっていたので、今回はその説明編です。
植林実験の対象とした場所は西オーストラリアのパースから600kmほど内陸に入ったレオノラという町の近くでした。
この辺りは平均の降水量は東京の約1/7と少ないのですが、ときどき内陸に迷い込んできた台風でドンと雨が降ることがあります。しかし、この地域の地面は地表のすぐ下にハードパンと呼ばれる硬い土の層があって、せっかくの雨水も土にしみこまずに洪水となって塩湖にながれて、そこで蒸発してしまいます。
そこで、このハードパンにドリルで穴をあけて、爆薬を詰めて爆破しました。爆破した後には直径3メートルぐらいでバラバラに砕かれたハードパンと土がつまった穴が出来ます。この穴に木を植林するわけです。
そして、穴をたくさん作り、その周りをブルドーザーでつくった土手で囲んで洪水で流れてくる雨水を集める。こんな手法で植林を行ったのです。
オーストラリアでは植林が盛んにおこなわれていますが、それは海に近くて雨の量が多い場所の話です。内陸部の雨の少ない場所で木が育つはずがない、といろいろな人たちに言われたものです。
1年たち2年たち、たしかに、植林した木のなかでいくつかの種類の木は枯れてしまいました。でも5年たっても、10年たっても、厳しい干ばつがあっても、ユーカリの一種のカマルドレンシスという種類の木はちゃんと枯れずに育つということが明らかになったのです。
昨年で20年、今年は21年目に入るのですが、カマルドレンシスは今でも成長を続け、もうすぐ樹木1本が平均で約1 tの二酸化炭素を固定できるまでになりました。
爆破やブルドーザーによる土手の造成で二酸化炭素が放出されているのですが、これだけの二酸化炭素が固定されていれば充分にプラスになることも確認しています。さらにこの植林が、偶然に成功したわけではなく、再現できることを検証したり、もっと効果的に二酸化炭素を固定する手法を探索したりしています。
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