デマを拡散しないように-5 BCGはコロナ肺炎の予防に効果があるか? 疑似相関のはなし(片桐教授)
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このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。
3月27日のNHKノニュースによると、「オーストラリアの研究機関は、新型コロナウイルスに有効かどうかを確認するため、結核予防に使われるBCGワクチンの臨床試験を行うと発表しました。」とのことでした。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200327/k10012354671000.html
BCGは「結核」の予防接種です。我々の頃は、ツベルクリン反応で陰性の場合にBCG接種を行ないました。日本では1960年以降小学生に行なわれていました。2005年以降は1才未満でこの予防接種を行なっています。私のように小学生になってからスタンプ式でチクッとやられたのを憶えている人も、まだ学生さんの中にはいるかもしれません。
結核は結核菌により引き起こされます。コロナウイルスと結核菌は、直接的に関係はありません。しかし、国別で見ると組織的にBCGの行なわれた国での感染拡大が比較的緩やかであるため、BCGがコロナウイルスの感染や重症化を抑える効果があるのではないかと期待されたわけです。さらに、国内の重症化患者はBCGが義務化される前の高齢者に多く、国内の若者の死者が少ないことは、そのようなBCGの効果を期待させるものです。
BCGのような結核ワクチンが免疫力を高めるという話は、以前にもありました。「丸山ワクチン」とよばれるものです。結核の他にハンセン病や末期ガンにも有効だとされました。しかし、なぜ効くのか?、すなわちその有効性や薬理機序についてはまだ解明されていません。そのため、日本でガンの治療方法としては認められていません。
このように「◯◯は××に効く」という話しは、その作用機序=メカニズムが解明されないと、なかなか信用されません。信用できません。プラセボ効果(プラシーボ効果=偽薬効果)の場合もあります。因果関係が不明確なのに、相関関係がある、関連しているという場合は「疑似相関」を疑ってかからなければなりません。「効果が見られるなら何でもOK」という考え方は、疑似相関の罠に陥りやすくなります。
2018年11月のNHKで「入浴習慣のある高齢者は要介護リスク低くなる」という千葉大学の研究成果に関するニュースが流れました。「ふだん、どれくらいの頻度で風呂につかっているかなどを事前に調べたうえで、3年後の状態を確認し、そのデータを統計的な手法を使って分析しました。その結果、冬場に週7回以上、風呂につかっている高齢者は、週2回以下の高齢者より介護が必要な状態になるリスクが29%低くなったということです。」だそうです。
でもこの記事を読んで、「入浴習慣のある高齢者は要介護リスクが低くなる」としても良いのでしょうか?。反論のためのひとつの仮説として、「体力がある老人は要介護になりにくい。」「体力のある老人は風呂に入ることができる。」と考えると、風呂に入ることと要介護になりにくいという事象の間の因果関係は崩れます。このような因果関係の成立しない相関を「疑似相関」と呼び、その共通の原因を「潜伏変数」と呼びます。
不明確な機構でつながっている因果関係の場合は疑似相関を疑い、潜伏変数を探し、検討しなければなりません。
このBCGとコロナ肺炎との間の関係も合理的な説明ができないのなら、やはり疑似相関を疑うべきです。そして、その潜伏変数を明確にすることはコロナ肺炎の制圧につながるかもしれません。
でも,本当にBCGがコロナ肺炎の予防に有効であると良いですね。
しつこいようですが、このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。
このブログを執筆している最中に、志村けん氏の訃報に接しました。ご冥福をお祈りいたします。