« 2020年2月 | トップページ | 2020年4月 »

2020年3月

2020.03.31

デマを拡散しないように-5 BCGはコロナ肺炎の予防に効果があるか? 疑似相関のはなし(片桐教授)

|

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

 3月27日のNHKノニュースによると、「オーストラリアの研究機関は、新型コロナウイルスに有効かどうかを確認するため、結核予防に使われるBCGワクチンの臨床試験を行うと発表しました。」とのことでした。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200327/k10012354671000.html

 BCGは「結核」の予防接種です。我々の頃は、ツベルクリン反応で陰性の場合にBCG接種を行ないました。日本では1960年以降小学生に行なわれていました。2005年以降は1才未満でこの予防接種を行なっています。私のように小学生になってからスタンプ式でチクッとやられたのを憶えている人も、まだ学生さんの中にはいるかもしれません。
 結核は結核菌により引き起こされます。コロナウイルスと結核菌は、直接的に関係はありません。しかし、国別で見ると組織的にBCGの行なわれた国での感染拡大が比較的緩やかであるため、BCGがコロナウイルスの感染や重症化を抑える効果があるのではないかと期待されたわけです。さらに、国内の重症化患者はBCGが義務化される前の高齢者に多く、国内の若者の死者が少ないことは、そのようなBCGの効果を期待させるものです。

 BCGのような結核ワクチンが免疫力を高めるという話は、以前にもありました。「丸山ワクチン」とよばれるものです。結核の他にハンセン病や末期ガンにも有効だとされました。しかし、なぜ効くのか?、すなわちその有効性や薬理機序についてはまだ解明されていません。そのため、日本でガンの治療方法としては認められていません。

 このように「◯◯は××に効く」という話しは、その作用機序=メカニズムが解明されないと、なかなか信用されません。信用できません。プラセボ効果(プラシーボ効果=偽薬効果)の場合もあります。因果関係が不明確なのに、相関関係がある、関連しているという場合は「疑似相関」を疑ってかからなければなりません。「効果が見られるなら何でもOK」という考え方は、疑似相関の罠に陥りやすくなります。
 2018年11月のNHKで「入浴習慣のある高齢者は要介護リスク低くなる」という千葉大学の研究成果に関するニュースが流れました。「ふだん、どれくらいの頻度で風呂につかっているかなどを事前に調べたうえで、3年後の状態を確認し、そのデータを統計的な手法を使って分析しました。その結果、冬場に週7回以上、風呂につかっている高齢者は、週2回以下の高齢者より介護が必要な状態になるリスクが29%低くなったということです。」だそうです。
 でもこの記事を読んで、「入浴習慣のある高齢者は要介護リスクが低くなる」としても良いのでしょうか?。反論のためのひとつの仮説として、「体力がある老人は要介護になりにくい。」「体力のある老人は風呂に入ることができる。」と考えると、風呂に入ることと要介護になりにくいという事象の間の因果関係は崩れます。このような因果関係の成立しない相関を「疑似相関」と呼び、その共通の原因を「潜伏変数」と呼びます。
1_20200330150001
不明確な機構でつながっている因果関係の場合は疑似相関を疑い、潜伏変数を探し、検討しなければなりません。
 
 このBCGとコロナ肺炎との間の関係も合理的な説明ができないのなら、やはり疑似相関を疑うべきです。そして、その潜伏変数を明確にすることはコロナ肺炎の制圧につながるかもしれません。
 でも,本当にBCGがコロナ肺炎の予防に有効であると良いですね。

 

 しつこいようですが、このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です

 このブログを執筆している最中に、志村けん氏の訃報に接しました。ご冥福をお祈りいたします。

2020.03.30

「『純水を飲むとおなかを壊す』という都市伝説(江頭教授)」に対する個人的コメント(片桐教授)

|

 先日の江頭先生のブログで「純水を呑むとおなかを壊す」という話しを取り上げられていました。「やっぱり私はやめておきましょう。君子危うきに近寄らず。敢えて毀傷せざるは孝の始めなり、ですよね。」ということで、江頭先生は自分で実験はされなかったようです。
 一方、片桐は学生時代にこの都市伝説を聞いて、実際に自分で人体実験をしました。結論から言えば、お腹を壊して下痢しました。その顛末の紹介です。

 飲用に供したのは当時でも少し古いといわれている、学生実験室の隅におかれていた、真鍮でできた古い「アランビック型蒸溜水製造装置」による純水でした。少し緑青が浮いていたことを憶えています。同種の蒸留水を作る装置は、今はほとんど使われていません。

1_20200330093701

 その都市伝説を私に教えてくれた当時の分析化学のT先生の示した「お腹を壊す理由の作業仮説」は「水が純粋になれば、そのクラスターが大きくなり、腸壁から上手く吸収されなくなる」というものでした。今にして思えば、飲んだ時点で胃袋の中のいろいろな成分で純水ではなくなるので、そんな馬鹿なことはないとわかるのですが、まあ、そのときはだまされてしまいました。

 蒸溜により出てきた水分をビーカー(コップを使わないあたりが…)で飲むと…、金属臭が口に広がりました。その日の夕方、私はトイレにこもっていました。絶対まねをしないで下さい!

 

続きを読む "「『純水を飲むとおなかを壊す』という都市伝説(江頭教授)」に対する個人的コメント(片桐教授)"続きを読む

2020.03.27

「壁掛けテレビ」と「テレビ電話」(江頭教授)

|

 TVドラマや漫画などで未来世界を描くとき、一時期は「壁掛けテレビ」と「テレビ電話」が必須のアイテムだったように思います。

 で、一時期ってどの時期?そうですね、私が子供だった頃ですから1970年代くらい、となるでしょうか。

 まずは「壁掛けテレビ」。昔のテレビは箱形だったのですが、これはブラウン管というガラス製で中身が真空の機器を使って映像を投影していたから。真空の中に電子のビームが送り込まれ、これが対面する表示部に塗布してある蛍光物質にぶつかって発光するという原理に基づいているものです。電子ビームが当たる位置、すなわち発光する位置を電圧で動かすので充分な移動距離をとるためにはそれなりの奥行きが求められたのです。

 でもこれは作る側の都合。利用者からすればTVは二次元の映像を映し出すための装置ですから、大きい画面のテレビが薄ければ薄いほど便利なわけです。いっそのことポスターのようにペラペラならが壁紙代わりに貼り付けるだけ大画面TVのできあがり、となる。でもそれはさすがに荒唐無稽ではないか。妥協案として額縁のような「壁掛けテレビ」が登場するわけです。

 さて、現在では「壁掛けテレビ」という言い方は一般的ではありません。正確には「薄型テレビ」となるのでしょうが「液晶テレビ」という言葉が一般的でしょう。「プラズマテレビ」も同じような使われ方をしたこともありますが今ではとんと耳にしません。液晶テレビも壁掛けされることはまれで、やはり昔のテレビと同様に自立しています。「壁掛けテレビ」という過去に作られた未来のイメージは大画面という機能の面では実現しましたが名称や形態の面ではすこし的を外した、ということでしょうか。

 「壁掛けテレビ」はまずまずとしても「テレビ電話」の方は大外れだったようです。

Roujin_tvdenwa

 

続きを読む "「壁掛けテレビ」と「テレビ電話」(江頭教授)"続きを読む

2020.03.26

「純水を飲むとおなかを壊す」という都市伝説(江頭教授)

|

 「都市伝説」というのはおかしいかな。「研究室(ラボ)伝説」とでも言うのでしょうか。研究室で先輩から後輩に語られる話には大切な注意事項や奥深い教訓に混じって真偽不明(おそらく偽)なお話が色々とあるものです。

 私が学生のころに聞いたそんな「研究室(ラボ)伝説」の一つが表題の「純水を飲むとおなかを壊す」というもの。でもこれ絶対おかしいですよね。純水と普通の水の違いは微量の混合物があるかないか。主成分は水であることには変わりはありません。もちろん水が体に悪いわけはない。残りの微量な成分で問題が起こる、というのなら話は分かりますが、微量な成分がないことで問題が起こる、というのはどうにも考えにくいことです。
 それに胃袋に水が入った状況を考えても、胃袋が空っぽ、なんてことがあるのでしょうか。胃袋の中にはもともと胃液があって、それに混ざったら微量成分が無いことなんて関係なくなってしまうと思います。

 とは言えこれは机上の議論。科学者たるもの実験で確かめるのがあるべき姿でしょう。ここは純水を飲んでおなかを壊すかどうか確認するべきでは?

 Medicine_cup_water

続きを読む "「純水を飲むとおなかを壊す」という都市伝説(江頭教授)"続きを読む

2020.03.25

飛行機の客室の温度はどのくらいであるべきか?(江頭教授)

|

 以前「飛行機の貨物室の環境」と題して飛行機の貨物室の温度と圧力の測定値について紹介したことがあります(下の図)。水深測定用のセンサーを海外(例によってオーストラリアです)のフィールドに運ぶ途中、偶然スイッチが入っていたために温度と圧力のデータが取れた、という経緯なのですが、貨物室は 0.8 気圧程度に減圧されていて温度は5℃くらい、というのが私の結論でした。


 さて、今回は貨物室ではなくてずばり客室のおはなし。でもセンサーのデータを取ったというお話ではありません。耳寄りな情報、というよりは愚痴の類いかも知れませんがおつき合いを。

 3月の始め、日本はまだ春には早すぎますが、一番寒い季節はどうにかすぎたかな、というところでしょうか。これがオーストラリアに行くとなると夏の一番暑い時期はすぎたが、と反転することに。昨年の出張では40℃越えのフィールドで作業をするという過酷な状況でしたが、今年の気象情報では30℃代だと聞いてほっとした気分で出発しました。

 実際に現地に到着すると昼の気温が30℃代の中頃になるものの夜はちゃんと涼しくて過ごしやすい温度でした。数週間前まで熱波( Heat Wave )が来ていて大変だった、という話を聞くにつけ良いタイミングだったと思う次第。とは言え日本と比べればかなり暑いので服装もまったく違います。

 行った先のオーストラリアについてはそれなりの服装を準備して荷造りしてOK。でも日本からオーストラリアに移動する途中の飛行機ではどんな格好をしたら良いのでしょうか?日本から空港に向かうまではそれなりに暖かい服装が必要ですが、もし飛行機の中が暑かったらどうしよう。服を脱げば良い、といっても限度がありますし…。

Photo_20200324182101

続きを読む "飛行機の客室の温度はどのくらいであるべきか?(江頭教授)"続きを読む

2020.03.24

オーストラリアの SUBWAY で驚いたはなし(江頭教授)

|

 今回もオーストラリア出張のお話です。表題の「SUBWAY」は地下鉄のことではなくてサンドイッチのチェーン店のほう。日本にもありますから知っている人も多いかも知れませんが、オーストラリアにも展開していて今回はそこで昼食を取ったときのお話です。

 西オーストラリアの内陸部を車で移動中に Merredin という町で昼食を、という事になりました。内陸から移動してきたので久々のファーストフードということで SUBWAY に。さて、出張中はどうしても食べ過ぎになる(体を動かしていておなかは空くし、食事もおいしい)のでカロリーにきをつけよう。ということで少し小さめのサンドイッチを頼みました。SUBWAY はサンドイッチはお客の注文に合わせたトッピングを入れてくれるのですが、その代わりに注文が結構難しい。(英語で野菜やソースの名前を早口に言われても分からない!)。なんとか注文が終わり、ふとパネルにあるカロリー表示をみると「950」という数字が。

 えっ、こんな大きさでこんなに高カロリーなの!

と驚いたのですが…。

 

Photo_20200324083801

続きを読む "オーストラリアの SUBWAY で驚いたはなし(江頭教授)"続きを読む

2020.03.23

少しさびしい卒業の日(江頭教授)

|

 2020年、3月19日は本学科の2期生の卒業式が予定されていました。残念ながらこの卒業式は今般のコロナウイルス問題のために中止となりました。それだけではありません、学科で予定されていた学位記の授与式、学部、学科でそれぞれ行う予定だった卒業記念パーティーもキャンセルとなってしまいました。今年は各研究室にて学位記を手渡すことで卒業式の代わりとすることとなったのです。

 さて、本来の予定では卒業式の会場は本学の八王子キャンパスの体育館。鎌田キャンパスの卒業生を含めて卒業生全員が一堂に会するはずでしたから、本来だったら下の写真のようににぎわうはずでした。(写真は昨年2019年3月のものです。)

Img_2442

 ところが今年は以下の通り。全く人気が無くて寂しい限りでした。

Img_3156

続きを読む "少しさびしい卒業の日(江頭教授)"続きを読む

2020.03.20

学位記授与(卒業)はなむけのメッセージ(高橋学科長)

|

<今回は今年度の卒業生に向けた高橋学科長からの祝辞を紹介します。>

 新型コロナウイルス感染・拡大防止の観点から、本学における学位記授与式は中止となりました。工学部応用化学科では、学科で行う予定であった学位記授与式を中止し、卒業課題を履修した研究室で学位記を授与しました。


 大学生活の締めくくりである学位記授与において、以下の卒業生諸君へのお祝いのメッセージを応用化学科から届けました。

 ご卒業おめでとうございます。皆さまの門出を祝ってメッセージをお送りします。

 皆さんは東京工科大学工学部の第2期生として入学し、勉学に勤しんでこられました。大学入学後の第一印象はどのようなものだったでしょうか。大学に入って、さぁ、何をする? 何をしようか、と考えていた人もいるでしょう。
 学部長 大山先生(入学時)から、「皆さんは学びたいと考えて大学に入学したのだよね」と言われたことを覚えていますか? その学びたいという気持ちを貫き、1年生の教養科目から応用化学の専門科目まで学びを進め、4年生では東京工科大工学部応用化学科での学びの “皆さんそれぞれの” 集大成である卒業論文を執筆しました。1年生の基礎科目から卒業論文までの成果が認められ、学士(工学)の学位を獲得したのです。

 皆さんの努力を讃えるとともに祝意を表したいと思います。心より、おめでとうございます。

 大学での学びでは、コーオプ実習もありました。大変な業務に勤しむことになった人もいたでしょう。きっと、これからの人生のどこかで役立つことがあると思います。また、大学生活では、授業だけでなくサークル活動のような課外活動でも大いに学生生活を満喫した人も多いのではないでしょうか。

Dsc_0647 Dsc_06482020

続きを読む "学位記授与(卒業)はなむけのメッセージ(高橋学科長)"続きを読む

2020.03.19

デマを拡散しないように-4 イブプロフェンを使ってはいけないとするフランス保健相Twitterコメントへの個人的コメント (片桐教授)

|

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

 この2020年のコロナ感染症騒動における3月15日のフランス保健相の「イブプロフェンを使ってはいけない、アセトアミノフェンを使え」というTwitterでのつぶやきは社会不安をかき立てています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20200315-00167830/
しかし、なぜイブプロフェンを使ってはいけないかについて、詳細な情報は無く、そのためこの情報をFake Newsと主張する人もいるようです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/masakazuhonda/20200317-00168265/
なぜ使ってはいけないかという理由は、その薬の作用機序を理解し、感染症への影響を考えれば、理解できるかもしれません。以下は、30年前に細胞性IV型アレルギー(対ウイルス免疫の暴走)の薬の開発に関与していたことのある、片桐の個人的な情報提供と見解です。

 風邪を引くといろいろな症状が出ます。これらの「症状」はウイルスが起こすというよりも、ウイルスに感染した細胞を白血球が攻撃する細胞性免疫反応により起こります。発熱は免疫細胞を活発化するための人間側の防御反応のひとつです。炎症はその白血球の攻撃=活性酸素の流れ弾、で周囲の細胞も傷つくことにより起こります。咳や痰も同じく、感染症への免疫による防御反応です。
 しかし、これらの感染症への防御反応は行き過ぎると患者の命を奪うこともあります。わかりやすさのために少しウソのある説明ですが、肺炎は肺に感染したウイルスを白血球がやっつけようと攻撃するために、肺の機能を奪うことにより生じます。肺の感染細胞を攻撃するために、白血球は血管からしみ出してきます。そのため血管壁の透過性が高くなり血しょうもしみ出して肺水腫を起こします。これは最終的にその人の呼吸を困難にし、命を奪います。がん治療中に治療がうまくいきガンが小さくなると、これまでがん細胞を攻撃していた免疫系が暴走してARDS(急性呼吸切迫症候群)を起こし死に至ることがあります。作家の遠藤周作さんはガン闘病中に肺炎でなくなりました。

 むやみやたらと症状を抑えるのは感染を広げるおそれがあり、得策ではありません。一方で免疫系の暴走を許すと命にかかわります。適切にコントロールしてやらなければならないということですね。

 発熱や頭痛などの不快な症状を緩和するために、市販の風邪薬にはこれらの症状を抑える成分が多数含まれています。鎮痛剤、抗炎症剤、解熱剤と呼ばれるお薬成分です。よく使われるそのようなお薬を大きく分けると、ステロイド系のものと非ステロイド系のものになります。ステロイド系のものは細胞性免疫系を元から止めて炎症を抑える薬です。感染症に使ってはいけない薬です。肌荒れによく効くステロイド軟膏を水虫に使うともっとひどくなります。

 非ステロイド系のお薬には、今回話題の中心になっているイブプロフェンやアセトアミノフェンの他にもエテンザミド、イソプロピルアンチピリン、アセチルサリチル酸(アスピリン)やインドメタシン(貼り薬)などがあります。これらのお薬の作用はアラキドン酸カスケードと呼ばれる痛みや炎症を伝達する物質を作る生体内の反応系を阻害することです。より具体的にはシクロオキシゲナーゼ(COX)と呼ばれる酵素の阻害です。このアラキドン酸カスケードの作るプロスタグランディンは何種類もあり、そのような生体情報の伝達だけではなく、胃壁の保護などにも関与します。だからインドメタシンを使い続けていると、胃潰瘍のような副作用を起こします。

 このCOXという酵素も大きく2種類あり、さらにその作り出す物質は場所等により異なるようです。そのため、薬によってCOX阻害作用の効果は異なってきます。イブプロフェンは強い「抗炎症作用」を持ち、アセトアミノフェンはそれに比べて弱いと言われています。そして、アセトアミノフェンは別のシステムで痛みを止めると考えられています。詳細は、例えば「日本ペインクリニック学会」のページをご参照ください。
https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keynsaids.html

 結局、強力に炎症を抑えてしまう抗炎症作用の強いお薬、例えばイブプロフェンは免疫まで抑制してしまうために、対コロナウイルス感染免疫を抑制してしまうから好ましくない、ということだと思われます。このような風説は30年前から言われていました。そのため,前のブログでも風邪薬のアセトアミノフェンについてほんのちょっとと言及しておりました(2020.3.5)。よく効く「良い」薬ほど、そのような副作用に注意すべきだということです。あまりにも当たり前の結論になってしまいました。また、抗炎症作用の弱いアセトアミノフェンには肝臓機能障害の副作用があります。

 以上、長々と述べましたが、抗炎症・鎮痛・解熱剤を理解して使うためには、それなりの知識が必要です。薬は毒にもなります。使う際にはバランスが必要です。その作用には個人差があります。生兵法は大怪我のもとです。専門家であるお医者様に相談して診断を受け、薬剤師の処方する最適なお薬を正しい用法で使うのが一番です。

 応用化学科の学生さんは、もしコロナ感染症が怖いと感じたなら、良い機会ですから一度、自分の使っている風邪薬や頭痛薬の「成分表」(薬の箱の横に書かれている)も読んでみましょう。

 

Photo_20200318183101

 しつこいようですが、このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

 

片桐 利真

 

2020.03.18

オーストラリア版トイレットペーパー騒動(江頭教授)

|

 ブログの前回の記事にも書きましたが、私は3月1日から11日までの間、オーストラリアに出張中でしていました。この日程はちょうどコロナウイルスに騒ぎが深刻になってゆく期間に当たっていて、入国時はちょっと注意という感じだったものが、出国時には大きな脅威のように扱われる時期にちょうど居合わせたわけです。

 特に印象的だったのはトイレットペーパーの品不足です。

 私が出国する際、ティッシュやトイレットペーパーが売り切れになっている、というニュースが流れていました。フィールドワークに備えてウェットティッシュを買おう、と思っていたのですが近所の店では品切れ。オーストラリアに入ってやっと立ち寄ったスーパーマーケットで購入できました。

 さて、旅行の行程をこなしてゆき半分を過ぎたころ、オーストラリアのニュースでもトイレットペーパーの品不足が云々され始めました。そんなことが、と半信半疑だったのですが3月6日に立ち寄ったスーパーの様子は以下の通り。

Img_3128

 さらに以下の様な断り書きが張り出してありました。

Img_3126

続きを読む "オーストラリア版トイレットペーパー騒動(江頭教授)"続きを読む

2020.03.17

オーストラリアに出張してきました(江頭教授)

|

 今月(2020年3月)の1日から12日まで、オーストラリアの植林サイトに出張してきました。12日と書きましたが実はオーストラリアにいたのは11日まで。機中泊で早朝に日本に到着する、という日程でした。

 さて、話題の新型コロナウイルスに広がりに対応して、3月15日からオーストラリア政府は全ての海外からの旅行者に14日間の自己隔離を要請しています。2週間ずれていたら飛行機を降りたところでそのまま隔離されて帰国、という状態になっていたところですが、今回は運良く全ての日程をこなすことができ、まずは一安心しています。

 以下の写真は帰りの空港の発着案内。中国行きの便が軒並みキャンセルされています。そのせいかどうかは分かりませんが空港はガラガラ。飛行機も空き席が多く、人と人の距離は優に 1 m 以上ある、という状態でした。

Img_3151

続きを読む "オーストラリアに出張してきました(江頭教授)"続きを読む

2020.03.16

デマを拡散しないように-3 マスクは鉄壁ではありません(片桐教授)

|

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。


 先のブログ記事「デマを拡散しないように-2」でマスクについていくつかコメントしました。


**********************
 コロナウイルスの大きさはNIID国立感染症研究所のページに、MERSコロナの情報として「他のコロナウイルスと同様、脂質二重膜のエンベロープに包まれた直径100 nmの楕円体で、エンベロープ表面に王冠に似た突起、スパイクがある。」と記載されています[https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2320-related-articles/related-articles-430/6116-dj4304.html]。
<中略>
この100 nmという大きさはPM2.5の粒子の25分の1の大きさということです。この大きさでは、300 nmの粒子を95%シャットするN95と呼ばれるマスクでも減らすことはできても完全に防ぐことは難しいでしょう。一般のガーゼマスクで呼気中のウイルスを防ぐのはほぼ困難でしょう。
**********************

さらに、少し古いものですが2009年に国民生活センターが「ウイルス対策をうたったマスク」という報告書を出しています。http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20091118_1.pdf
それによると、検査対象の国内販売の15商品のうち、記載されているスペックを満たしていたのはわずか3種類だったそうです。「ウイルス除去率99%」とうたっていても、実際は40%程度という商品もあったようです。そのためか、現在はウイルス除去率をうたって販売しているマスクはなくなりました。記載されていても、以前のように大きな文字で堂々とは書かれていません。

 このような記述を読むと「完璧にブロックできないのなら、マスクは無意味」と考えてしまう方がおられます。確かにマスクは鉄壁の防御ではありません。しかし、まったく無意味ではありません。
 飛沫感染を防ぐ効果はN95マスクでなくてもある程度期待できます。マスクもせずにくしゃみや咳をしている人のそばに行く場合には効果を期待できます。また、マスクをかけていると、ウイルスに汚染されている手指を口に触れさせない効果もあります。
 マスクは鉄壁ではなくても、やはりある程度の効果を期待できる予防対策です。大事なのは、マスクだけに頼らないことです。マスクはひとつの予防メソッドであり、それだけに頼ってはいけません。手洗やうがいなどの対策、免疫を高めるための栄養・食事への気配りなど他の対策と併用すべき対策です。金曜日にトイレで手を洗っていたら、マスクをかけた学生が手を洗わずに後ろを通り過ぎました。コロナ感染予防的に見ればちぐはぐな対応です。手を洗うチャンスがあれば必ず手を洗いましょう。

 先日参加した安全環境に関する研究会で、O大学の先生がコロナ騒動に関して「政府の水際対策は失敗したとお考えの方は手を上げてください」と観客に話をふった時に会場にいた大多数の人(大学や企業の安全の専門家)は手を上げました。手を上げなかったのは私を含めて1〜2割程度だったと思います。
 政府の水際対策はマスクと同じです。いろいろな対策のひとつと位置づけるべきであると、私も思います。いろいろな批判もありますが、確定患者の半数以上の感染経路を明らかにできるほどには流入の抑制に成功した今回の水際対策は、鉄壁ではなくてもそれなりに成功しているというのが私の意見です。

 安全工学の講義の「対策立案」の時に、一般の人の危険認識について「個別的認識と統計的認識」の話しをしました。「ガンの治癒率60%の治療法と40%の治療法があるとして、どちらが優れた治療法だろうか」というものですね。統計的には60%の治療法の方が優れていますが、患者にとっては自分に有効な治療法が優れています。どんな治療法でも患者は生きるか死ぬかの二択になり、60%生きている状態になることはありません。
 個人としてはコロナ肺炎にかかるかかからないかの二択です。だからこそ、水際対策には100%の完璧さを求めたくなります。そして100%でなければ0%の評価を下します。しかし、社会全体の統計的視点では、60%の対策もまた有効な対策であると評価できるわけです。

 マスクに100%の防御力を期待しては行けません。マスクをしていれば大丈夫と不用意に安心してはいけません。だからといって、100%でないのなら無意味であるとマスクをあきらめてもいけません。大事なのは多重的より多面的な対策により小さなインシデントの不幸な偶然の重なりを避けることです。これはヒヤリハット対策で大きな事故を避けることに似ています。

Fig2_20200311180101

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。

2020.03.13

研究会へ参加しました(片桐教授)

|

 このブログの内容を不用意に拡散しないように。一部分を取り上げて解釈しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばに踊らされるのは危険です。

 

 3月7日に「研究実験施設・環境安全教育研究会」の「第9回環境安全研究発表会」が東京大学でありました。私も参加し、発表してきました。このコロナ騒動のさなかに、しかも安全関係の専門家の研究集会を強行するとは…なかなかに肝の据わったことです。例年に比べ参加者数は少なく、主催者の挨拶の「無観客研究会になるのではないかと危惧した」とのコメントもありました。すでに北海道大学や愛媛大学は不要不急の出張自粛(禁止)になっているようです。急遽、他大学の共同研究者により発表されたケースもありました。

 今回、私は「有機溶媒作業時にゴム手袋を使うことの危険性」という題目で、発表を行ないました。2018年度、2019年度のフレッシャーズセミナーで1年生の行なった実験結果を元に、再現性確認の実験結果を含めて発表しました。

Fig_20200311175001

 今回の研究会では全部で12件の発表がありました。その中でO大学安全衛生管理部の先生のご発表「新型コロナウイルスに関する事実関係の解析とそれに基づく大学としてのリスク対応」というご発表は、皆の耳目を集めました。
 その先生いわく、「発表申込をした時点(1月下旬)では、正直こんなに大事になるとは思いませんでした」とのことですが、それでもこのような発表準備をされたという慧眼には恐れ入ります。「危機管理では最悪を想定する」という姿勢は見習いたくおもいます。
 O大学では、今回、2009年の新型インフルエンザ対策で購入していたマスクやアルコール消毒薬の備蓄が重宝し活用されているそうです。「10年もののVSOPアルコール消毒剤ですが、まあ消毒用なのでカビが生えたり腐ったりすることは無いと思います」とのことでした。また、不足した時のためにエタノール70%、塩化バンザルコニウム0.1%、グリセリン5%を水に溶かしたものを準備しているそうです。このグリセリン5%は「アルコールだけでは手荒れを起こすので、手への5%の優しさ」だそうです。大学の専門家の審査を通して今後使用する予定だそうで、今回の会合の会場にも持ってきておられました。

 私の発表ではうちの研究室のマスコットの「フッ素君」が登場します。いつもはいちいち説明しないのですが、今回だけは「この子はうちの研究室のマスコットのフッ素君です。コロナ君ではありません。」と紹介しました。

Fig12

 このブログの内容を不用意に拡散しないように。一部分を取り上げて解釈しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばに踊らされるのは危険です。

 

片桐 利真

 

2020.03.12

コロナ騒動 海外旅行が難しくなりました(片桐教授)

|

 このブログの内容を不用意に拡散しないように。一部分を取り上げて解釈しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばに踊らされるのは危険です。

 3月5日に首相官邸は新型コロナウイルス感染症対策本部(第 17 回)の「水際対策の抜本的強化に向けた新たな措置」において、新型コロナ対策として検疫の強化を発表しました。https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/taisaku_honbu.html

 その主な内容は:

 

2. 検疫の強化(厚生労働省)

 中国(香港及びマカオを含む。以下同様。)及び韓国からの入国者に対し、検疫所長の指定する場所で 14 日間待機し、国内におい て公共交通機関を使用しないことを要請。

3. 航空機の到着空港の限定等(国土交通省)

(1)航空機:中国又は韓国からの航空旅客便の到着空港を成田国際空港と関西国際空港に限定するよう要請。

(2)船舶:中国又は韓国からの旅客運送を停止するよう要請。

4. 査証の制限等(外務省)

(1)中国及び韓国に所在する日本国大使館又は総領事館で発給された一次・数次査証の効力を停止。

(2)香港及びマカオ並びに韓国に対する査証免除措置を停止。

 

です。これにより3月9日からの帰国者は14日間、帰国後外出の自粛、公共交通機関の使用の自粛となります。自宅へ戻る人は良いのですが、ホテルなどに閉じこもる場合、その宿泊代金は本人負担になります。国は補償・補填してくれません。その隔離場所?への移動手段もレンタカーなどに限られ、準備していない人は空港から出られないそうです。大変な時間的・経済的な負担です これ以上、国内の感染者を増やさないためには、やむを得ない決断なのでしょう。しかし、社会的な影響の大きな決断です。人命を守るための人権の大きな制限です。大学でも中国からの留学生への影響など、その影響が懸念されます。


 まだ、日本のパスポートパワーの強くなかった1970年前代は、海外へ出かけることは大変なことでした。私は1972年に父の仕事の都合で1年間アメリカ合衆国に行きました。当時はクレジットカードも発達しておらず、また、持ち出せる外貨も限られていました。父は大変苦労したようです。今は、パスポートとクレジットカード(とお金に余裕)があれば簡単に海外旅行を楽しめる時代になっています(した)。

 今回のコロナ騒動はこのような気軽な海外渡航を妨げています。帰国後に14日間も足止めされると、学生生活や社会生活にさしさわります。3月のこのシーズンに卒論や修論を提出し卒業旅行を計画していた人は、海外旅行の計画がつぶれてがっかりしていると思います。なかには「何とかなるだろう」と楽観的に構えて旅行を強行する人もいるでしょう。でも、帰国後に足止めされてしまうと、日程は大きく狂います。コロナの流行していない国への旅行も油断はできません。「日本というコロナ危険地帯」からやってきた旅行者は入国を拒否されたり、海外で拘束・隔離されてしまう恐れすらあります。帰国できなければ、内定している会社に入社できなくなる恐れもあります。そして、日本国内でのコロナウイルス感染拡大が収束しても、世界的に見れば感染拡大はまだまだ続くと懸念されます。これまでとは違う時代になってしまいました。

 今回のような非常時でない平時でも、海外旅行へ行かれる学生さんは、それが家族旅行や友達との私的な旅行でも、大学や担当の教員に、あなたの海外旅行へ行く旨を必ず知らせておいてください。私的な旅行でのトラブルの場合、大学には直接助けられることはあまりありません。でも、アドバイスはできます。また、個人的に先方国での知人を紹介できます。必ず事前に大学への届出や先生への連絡をしておきましょう。それは学生という立場であっても、大学という組織に所属するメンバーの義務のひとつです。

Fig0

 このブログの内容を不用意に拡散しないように。一部分を取り上げて解釈しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばに踊らされるのは危険です。

 

片桐 利真

 

2020.03.11

書評「新版 理系のためのレポート・論文完全ナビ」(江頭教授)

|

今回紹介するのは 見延 庄士郎 氏の著作

「新版 理系のためのレポート・論文完全ナビ (KS科学一般書)」(講談社 2016)

です。

 前回紹介した「実験レポート作成法」と比較すると実験レポートだけでなく卒業論文の作成までを視野に入れているところが特徴でしょう。実際、本書の第一部「実験レポート・卒業論文の内容」では、実験レポートと卒業論文との位置づけの違いなどにも触れています。

 また、第二部「実験レポート・卒業論文の文章」では良い文章、分かりやすい文章を書くにはどうするべきか。そのコツをいろいろな視点から説明しています。

 そして、第三部の「実験レポート・卒業論文の作成準備」では Wikipedia から始まって Web of Science や Scopus などのデータベースの利用法を丁寧に解説しています。

 最後の第四部「実験レポート・卒業論文の執筆」は具体的な手順についての説明。論点メモを準備しい執筆、そしてチェックをくり返すことで良い論文、レポートを作る手法が示されています。

41b5kqc7snl_sx346_bo1204203200_

続きを読む "書評「新版 理系のためのレポート・論文完全ナビ」(江頭教授)"続きを読む

2020.03.10

堺屋太一氏が描く「石炭産業の終焉」(江頭教授)

|

 堺屋太一氏は石油ショックを見事に予見した「油断」をはじめとした未来予測小説の名手でした。だから最近の脱石炭の機運を予測して石炭産業の終焉を予測した小説を…。

 という訳ではありません。ここで終焉を迎えるのは「日本の」石炭産業。1950年代から始まった燃料の流体化の影響を受けて、日本でも国産の石炭から輸入された石油への燃料の転換がおこりました。それにともなって日本の石炭産業はほぼ消滅してしまったのでした。もちろん、小説ではなくいろいろな組織が発展したり消滅したりする、そのメカニズムを考察した書籍「組織の盛衰 」の一部なのです。

 さて、今でこそ日本の化石燃料は石油、天然ガス、石炭が大体同じ程度。やや石油が多いという配分で全て海外からの輸入という状態です。でも戦前はもちろん石炭が中心。世界では太平洋戦争の前後に石炭から石油への転換がスタートしたのですが、戦後の日本では海外から石油を購入する外貨が不足していたため、国内での石炭生産を優遇した、という経緯があるのです。そのため戦後の石炭産業が大発展し、日本の社会で大きな存在感を示していました。

 しかし、高度経済成長を経て外貨が豊富になると石炭から石油へのエネルギー革命の波が容赦なく日本に訪れたのでした。

「エネルギー源というものは、容易に転換できないが、一旦転換がはじまると急激に変化する」

堺屋氏の指摘の通りでしょう。エネルギー産業は基本的には BtoB で企業間の取引が中心となっています。どのエネルギーが有利か、安価か、というシビアな判断が行われますから、石炭と石油のコストがクロスすれば一気に変革が進みます。

Isbn4569568513

続きを読む "堺屋太一氏が描く「石炭産業の終焉」(江頭教授)"続きを読む

2020.03.09

試験と文章を書く力(江頭教授)

|

 大学の授業、学期の終わりには通常期末試験が行われます。学生諸君はどんな試験問題がでるだろう、と思い悩みながら授業の予習・復習に励むわけです。実は私たち教員もどんな試験問題を作ろうか、と思い悩むわけです。

 試験問題のスタイルはいろいろ。〇×式の問題、選択肢から選ぶ方式、穴埋めで語句や数値を入れるスタイルなど。中にはマークシートを独自に準備して試験をされる先生もいらっしゃいます。

 これらの出題形式のメリットは明らか。採点がやり易いことです。ほぼ機械的に採点できるので、学生数の多い授業などではよく用いられる形式かもしれません。デメリットは問題に回答する思考の過程を見ることができないことでしょう。

 学生の思考を確かめる、という意味では文章題が良いでしょう。学生諸君は単に結果を示すだけではなく、どうしてその結果になるのか、その過程をも示すことになります。文章題の回答は、ある意味では自分の主張「答えは○○である」を示すための簡単な作文だ、ということもできるでしょう。

Document_marksheet

続きを読む "試験と文章を書く力(江頭教授)"続きを読む

2020.03.06

本日発表、研究室配属(江頭教授)

|

 2月4日に開催した「研究室配属に関する説明会」、その結果を反映して、本日研究室配属の結果が公開されます。

 2月始めに説明会で3月6日に配属発表、約一か月といいうのは時間がかかりすぎでは?そう思った人も多いかも知れませんね。でもこの期間、学生諸君は興味のある研究室を訪問したり有意義に時間をつかう人も多くいます。

 研究室配属は学生さん達の希望優先しています。この場合、どうしても希望者数のばらつきが起こるので何らかの調整が必要となります。このため、本学科での配属は

「学生の希望、研究室への適性、GPA、習得単位数等」を総合的に判断する

という申し合わせになっています。ここに「GPA、習得単位数」が入っているのがポイントです。これら、成績情報を使った調整は後期の成績が確定した後でないとできないのですから。

52_2_20200229140201

続きを読む "本日発表、研究室配属(江頭教授)"続きを読む

2020.03.05

コロナ騒動 局限対策(片桐教授)

|

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人の不確かなことばに踊らされるのは危険です。

 2020年の2月後半はコロナウイルス騒動で大騒ぎになっています。このときこそ、安全工学の講義で習った危機管理を実践しましょう。感染しないようにするための「予防対策」だけではなく、かかってしまった時の「局限対策」を考えましょう。

 世間に出回っている情報の多くは予防対策に関するものです。しかし,火事の時の消火器のように、感染してしまった時のための「局限対策」も意識しましょう。コロナ肺炎にかかってしまったときのために,何を準備すれば良いのか?。答えは簡単です。インフルエンザにかかってしまった時と同じ準備をすることです。インフルエンザとコロナ肺炎の大きな違いは、特効薬のないことです。インフルエンザはタミフルやリレンザなど特効薬で軽く済ませされます。また、予防接種も有効です。しかし、コロナ肺炎にはワクチンも特効薬もまだありません。25年前のインフルエンザへの対応、対症療法を参考にしましょう。

 一番大事な局限対策は、栄養と睡眠により免疫力を維持することです。それに必要なものは、通常の日常品や食料、水の備蓄に加えて、以下のようなものを挙げられます。

 一人暮らしの場合、おかゆを作ってもらえることを期待できないので、ゼリー食を用意しましょう。あれならのどをすんなり通ります。また、水もミネラルウォーターだけではなく、スポーツドリンクも用意しましょう。桃缶については、各自のご判断でご準備ください。

 風邪薬も買っておきましょう。症状を緩和してくれます。アセトアミノフェン配合の風邪薬をすすめているWeb Pageの信頼性については自己責任でご判断ください。湿布約は筋肉痛の緩和の他に咳の緩和に有効です。のど飴、うがい薬も用意しましょう。ネギよりも長期保存できます。ビタミンCも風邪に良いと言われています。保険証や診察券も準備しておきましょう。

 着替えは多めに用意しましょう。特に汗をかいた後の下着は必要です。風呂やシャワーを使えないときのために身体を拭くデオドラントボディペーパーもあるといいでしょう。湿気た布団の代えの無い場合は、寝袋などを用意しておくと良いでしょう。布団乾燥器も欲しいですね。でもキリがありません。

 最後に、連絡手段を確保しましょう。携帯電話だけでなく、連絡先のメモも用意しましょう。救急車を迷った時の#7119、実家の電話番号、大学の電話番号のメモを作りましょう。自分で連絡できなくなった時にも有効です。

 後はTPOに応じて適切な準備しましょう。

 安全工学で習ったことを活用すれば、準備すべきことを明らかにできます。特に第15回で取り上げたBCPを個人の生活にも当てはめてみましょう。普段の生活に活かしてこそ実学です。

 

1_20200302115701

このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。

 

片桐 利真

2020.03.04

デマを拡散しないように-2(片桐教授)

|

<この記事は2020年3月4日に公開したヴァージョンから修正されています。>

 

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

 

 2020年の2月後半はコロナウイルス騒動で大騒ぎになっています。私も家族を守るためにいろいろな情報を仕入れようとしています。しかし、ネット上はどう考えてもおかしな情報に満ちています。
 以下にFake newsの例を上げます。

**** Fake News ************
拡散お願いします
コロナウイルス対策の内容 ◯◯病院の看護婦さんからのアドバ イスを提供いたします。ご参考にされてください。
今回のウイルスは、熱に弱いそう です。
<中略>
今回に武漢ウイルスは耐熱性がなく、26-27度の温度で死にます。 そのため、お湯をたくさん飲む。親戚にお湯を飲ませれば予防できる。 陽射しの下に行ってください。冷たい水、特に氷水を飲まないでください。 お湯を飲むことはすべてのウイルスに効果的です。ぜひ覚えてください。
コロナウイルスに対する医師の助言: 1.の大きさが非常に大きく、(セルの 直径は約400-500nm)、 すべての 一般マスク(N95の機能だけでなく) もこれをフィルタリングすることができます。
<後略>(原文では◯◯病院のところに実在の病院名が記載されていた。)
****************

 まず、「拡散お願いします」と書かれている情報はFake Newsだと考えるべきです。
 次に、前半の「熱に弱い」ですね。もちろんウイルスは煮沸などには弱いでしょう。しかし、体温より低い「26-27度の温度で死にます」は、どう見てもおかしい(それ以前に「ウイルスが死ぬ」という表現もおかしい)。体温以下の温度でウイルスを不活性化できるのなら、ほ乳類や恒温動物に取り憑いたとたんに不活性化し、感染できません。
 また、後半のウイルスの大きさもおかしい。NIID国立感染症研究所のページにはMERSコロナの情報として「他のコロナウイルスと同様、脂質二重膜のエンベロープに包まれた直径100 nmの楕円体で、エンベロープ表面に王冠に似た突起、スパイクがある。」と記載されています[https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2320-related-articles/related-articles-430/6116-dj4304.html]。インフルエンザウイルスも100 nmです。しかし、このウイルスは周りに水分をまとって実サイズはそれよりも大きなものになるそうです。この100 nmという大きさはPM2.5の粒子の25分の1の大きさということです。この大きさでは、300 nmの粒子を95%シャットするN95と呼ばれるマスクでも減らすことはできても完全に防ぐことは難しいでしょう。一般のガーゼマスクで呼気中のウイルスを防ぐのはほぼ困難でしょう。
 このような不確かな情報、少し調べればおかしいなと思われる情報を拡散してはいけません。どうしても拡散したければ、まず自分で信頼できる情報源により、裏をとりましょう。

 私は「呼気のろ過」による予防という目的でのマスクの使用はあまり期待できないと思います。実際、十分な装備だったと思われるダイアモンドプリンセス号の検疫官も感染しました。医療関係の方々の感染もニュースになっています。医療のプロが同じように感染するということは、人的なミスではなく設備(マスクなど)の機能不足を疑うべきだと思います。我々一般の者は、感染者のいるかもしれない人ごみを避ける予防対策を実践すべきです。
 一方、飛沫感染を防ぐ効果はN95マスクでなくても期待できます。マスクもせずにくしゃみや咳をしている人のそばに行く場合には効果を期待できます。でもより効果的なのは、やはり、そのような人のそばに寄らないことです。患者さんのマスクは飛沫の拡散を抑えることでウイルス拡散防止の効果を間違いなく期待できます。だから、風邪気味の人、花粉症の人は周りを不安にさせないように、マスクをしましょう。
 また、マスクをかけていると、ウイルスに汚染されている手指を口に触れさせない効果を期待できます。電車の手すりやつり革に付着しているウイルスからの感染の懸念される場合、そこに触れた手や指で顔の粘膜を触れる行為は危険です。その意味では、普通の手袋(例えば軍手)も同様に効果的です。手袋をはめた手でそのまま目や口を触らないでしょうから、有効な防御手段になります。

 このように科学的に分析し判断すれば、これから本当に対策すべきことを明らかにできます。このように普段の生活に活かしてこそ実学です。

 

2_20200302095801

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。

片桐 利真

2020.03.03

デマを拡散しないように-1(片桐教授)

|

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばを鵜呑みにして踊らされるのは危険です。

 2020年の2月後半はコロナウイルス騒動で大騒ぎになっています。この週末に近所のスーパーへ買い物に行ったら、まだ開店後30分だというのに、マスクの他にトイレットペーパー、ティッシュ、キッチンタオル、特売の米、袋ラーメン、ホットケーキミックス、缶詰などのいくつかの棚は空っぽでした。これまで自宅に備えていなかった人は「売り切れ続出」のニュースを見て我先にと買いだめに走ったのでしょうか。

 1972年のオイルショックの時も「トイレットペーパーがなくなる」という噂で、同じような事態になりました。1993年の米不作の時は埼玉のスーパーの米は消え、販売していても2倍量のタイ米と抱き合わせでした。2011年の東日本大震災の時には岡山でもペットボトルのミネラルウォーターの「売り切れ」を見かけました。「足りない」という情報に対する人の行動はいつも同じようです。
 ここで、本当に足りない、これからも不足するのかは、自分の目で見極めなければなりません。そのとき、定量的な分析能力を必要とします。確かに、マスクは不足しています。日本衛生材料工業連合会のデータ[http://www.jhpia.or.jp/data/data7.html]によると、もともとマスクの生産・輸入量は2018年において55億枚です。一人当たり年間で43枚ですね。日本人の3割は花粉症と言われていますから、花粉症の人は100枚くらいを1年で使うとしてまあ妥当な量でした。しかし、今回の騒動で中国からの輸入されなくなると、国内生産は11億枚なので、年間一人10枚以下しか手に入らない計算になります。これでは品不足になるのは当然です。政府はこの3月に6億枚の生産を指示しているそうです。年間だと72億枚ですから、これから状況の改善を期待できます。あとは供給スピードの問題ですね。
 一方、トイレットペーパーについては、おしりの増加はありません。その需要量はほとんど変化しません。また,その97%は国内生産です。そうすると、今不足しているのは備蓄に回されている分で、家の物置をいっぱいにしたら需給のバランスは元に戻るでしょう。慌てる必要は無いということになります。国内生産の比率の高いキッチンタオルや食料品も同じです。その意味でお米の買いだめもナンセンスと言えばナンセンスです。
 このように分析してみれば、「トイレットペーパーが不足する」というSNS上で拡散している情報はFake Newsだと判断できます。いや、確かにこのようなFake Newsに踊らされた買い溜めにより「一時的に」品薄になるというのは容易に予想されることです。常日頃から災害に備えて2週間分の食品や日用品の備蓄を行なっていれば、このような騒動に巻き込まれません。

 このように定量的に工学的に分析し判断すれば、これから本当に対策すべきことを明らかにできます。このように普段の生活に活かしてこそ実学です。

3_20200302095601

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。

 

片桐 利真

2020.03.02

東京工科大学の多様な入試制度(江頭教授)

|

 2020年2月29日には本学の入学試験が行われました。といっても入学試験が行われたのはこの日だけではありません。この日行われたのはB日程の入試。もちろんA日程もあるわけで複数回の入学試験が行われているわけです。

 来年度以降の入学試験がどんな形式になるかは未定の部分ありますので、随時確認していただきたいのですが、本学の入試は上述の様に複数の日程があること、会場も複数用意されていること、それも本学の八王子キャンパスと蒲田キャンパス以外にも学外会場が準備されていること、推薦制度、奨学生入試、AO入試、センター利用試験など、形式の違う入学試験が用意されていることなど、多様性な制度が準備されています。

Photo_20200229060601

続きを読む "東京工科大学の多様な入試制度(江頭教授)"続きを読む

« 2020年2月 | トップページ | 2020年4月 »