デマを拡散しないように-1(片桐教授)
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このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばを鵜呑みにして踊らされるのは危険です。
2020年の2月後半はコロナウイルス騒動で大騒ぎになっています。この週末に近所のスーパーへ買い物に行ったら、まだ開店後30分だというのに、マスクの他にトイレットペーパー、ティッシュ、キッチンタオル、特売の米、袋ラーメン、ホットケーキミックス、缶詰などのいくつかの棚は空っぽでした。これまで自宅に備えていなかった人は「売り切れ続出」のニュースを見て我先にと買いだめに走ったのでしょうか。
1972年のオイルショックの時も「トイレットペーパーがなくなる」という噂で、同じような事態になりました。1993年の米不作の時は埼玉のスーパーの米は消え、販売していても2倍量のタイ米と抱き合わせでした。2011年の東日本大震災の時には岡山でもペットボトルのミネラルウォーターの「売り切れ」を見かけました。「足りない」という情報に対する人の行動はいつも同じようです。
ここで、本当に足りない、これからも不足するのかは、自分の目で見極めなければなりません。そのとき、定量的な分析能力を必要とします。確かに、マスクは不足しています。日本衛生材料工業連合会のデータ[http://www.jhpia.or.jp/data/data7.html]によると、もともとマスクの生産・輸入量は2018年において55億枚です。一人当たり年間で43枚ですね。日本人の3割は花粉症と言われていますから、花粉症の人は100枚くらいを1年で使うとしてまあ妥当な量でした。しかし、今回の騒動で中国からの輸入されなくなると、国内生産は11億枚なので、年間一人10枚以下しか手に入らない計算になります。これでは品不足になるのは当然です。政府はこの3月に6億枚の生産を指示しているそうです。年間だと72億枚ですから、これから状況の改善を期待できます。あとは供給スピードの問題ですね。
一方、トイレットペーパーについては、おしりの増加はありません。その需要量はほとんど変化しません。また,その97%は国内生産です。そうすると、今不足しているのは備蓄に回されている分で、家の物置をいっぱいにしたら需給のバランスは元に戻るでしょう。慌てる必要は無いということになります。国内生産の比率の高いキッチンタオルや食料品も同じです。その意味でお米の買いだめもナンセンスと言えばナンセンスです。
このように分析してみれば、「トイレットペーパーが不足する」というSNS上で拡散している情報はFake Newsだと判断できます。いや、確かにこのようなFake Newsに踊らされた買い溜めにより「一時的に」品薄になるというのは容易に予想されることです。常日頃から災害に備えて2週間分の食品や日用品の備蓄を行なっていれば、このような騒動に巻き込まれません。
このように定量的に工学的に分析し判断すれば、これから本当に対策すべきことを明らかにできます。このように普段の生活に活かしてこそ実学です。
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