「壁掛けテレビ」と「テレビ電話」(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
TVドラマや漫画などで未来世界を描くとき、一時期は「壁掛けテレビ」と「テレビ電話」が必須のアイテムだったように思います。
で、一時期ってどの時期?そうですね、私が子供だった頃ですから1970年代くらい、となるでしょうか。
まずは「壁掛けテレビ」。昔のテレビは箱形だったのですが、これはブラウン管というガラス製で中身が真空の機器を使って映像を投影していたから。真空の中に電子のビームが送り込まれ、これが対面する表示部に塗布してある蛍光物質にぶつかって発光するという原理に基づいているものです。電子ビームが当たる位置、すなわち発光する位置を電圧で動かすので充分な移動距離をとるためにはそれなりの奥行きが求められたのです。
でもこれは作る側の都合。利用者からすればTVは二次元の映像を映し出すための装置ですから、大きい画面のテレビが薄ければ薄いほど便利なわけです。いっそのことポスターのようにペラペラならが壁紙代わりに貼り付けるだけ大画面TVのできあがり、となる。でもそれはさすがに荒唐無稽ではないか。妥協案として額縁のような「壁掛けテレビ」が登場するわけです。
さて、現在では「壁掛けテレビ」という言い方は一般的ではありません。正確には「薄型テレビ」となるのでしょうが「液晶テレビ」という言葉が一般的でしょう。「プラズマテレビ」も同じような使われ方をしたこともありますが今ではとんと耳にしません。液晶テレビも壁掛けされることはまれで、やはり昔のテレビと同様に自立しています。「壁掛けテレビ」という過去に作られた未来のイメージは大画面という機能の面では実現しましたが名称や形態の面ではすこし的を外した、ということでしょうか。
「壁掛けテレビ」はまずまずとしても「テレビ電話」の方は大外れだったようです。
まず70年代ごろの「テレビ電話」のイメージですが、いわゆる「黒電話」の様なものにブラウン管的な「何か」がくっついているものだったと記憶しています。音声だけの電話に映像を送る機能をつける、というアイデアを分かりやすく具現化するとこうなる、ということでしょうか。
2020年現在では「テレビ電話」として期待されていた機能はすでに実現されていますが、昔私達が想像したような使い方はされていません。当時は「電話」といえば固定電話だったのですから、電話をかける、ということにそれなりの重みというか儀式的な緊張感(オーバーかな)があったのです。「テレビ電話」より先に携帯電話が実用化され普及することによって電話をかけるという行為は非常にハードルの低いものとなりました。これにわざわざ映像をつける必要があるのか。そもそも携帯電話をかけている時に映像を見る余裕があるのか。「テレビ電話」が実現されるまえに「電話」の位置づけが変わってしまったのですね。
比較的単純な技術の進歩についての予測でもなかなか想像とおりにはならない。未来を予測するというのはそれだけ難しいということでしょう。
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