デマを拡散しないように-2(片桐教授)
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<この記事は2020年3月4日に公開したヴァージョンから修正されています。>
このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。
2020年の2月後半はコロナウイルス騒動で大騒ぎになっています。私も家族を守るためにいろいろな情報を仕入れようとしています。しかし、ネット上はどう考えてもおかしな情報に満ちています。
以下にFake newsの例を上げます。
**** Fake News ************
拡散お願いします
コロナウイルス対策の内容 ◯◯病院の看護婦さんからのアドバ イスを提供いたします。ご参考にされてください。
今回のウイルスは、熱に弱いそう です。
<中略>
今回に武漢ウイルスは耐熱性がなく、26-27度の温度で死にます。 そのため、お湯をたくさん飲む。親戚にお湯を飲ませれば予防できる。 陽射しの下に行ってください。冷たい水、特に氷水を飲まないでください。 お湯を飲むことはすべてのウイルスに効果的です。ぜひ覚えてください。
コロナウイルスに対する医師の助言: 1.の大きさが非常に大きく、(セルの 直径は約400-500nm)、 すべての 一般マスク(N95の機能だけでなく) もこれをフィルタリングすることができます。
<後略>(原文では◯◯病院のところに実在の病院名が記載されていた。)
****************
まず、「拡散お願いします」と書かれている情報はFake Newsだと考えるべきです。
次に、前半の「熱に弱い」ですね。もちろんウイルスは煮沸などには弱いでしょう。しかし、体温より低い「26-27度の温度で死にます」は、どう見てもおかしい(それ以前に「ウイルスが死ぬ」という表現もおかしい)。体温以下の温度でウイルスを不活性化できるのなら、ほ乳類や恒温動物に取り憑いたとたんに不活性化し、感染できません。
また、後半のウイルスの大きさもおかしい。NIID国立感染症研究所のページにはMERSコロナの情報として「他のコロナウイルスと同様、脂質二重膜のエンベロープに包まれた直径100 nmの楕円体で、エンベロープ表面に王冠に似た突起、スパイクがある。」と記載されています[https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2320-related-articles/related-articles-430/6116-dj4304.html]。インフルエンザウイルスも100 nmです。しかし、このウイルスは周りに水分をまとって実サイズはそれよりも大きなものになるそうです。この100 nmという大きさはPM2.5の粒子の25分の1の大きさということです。この大きさでは、300 nmの粒子を95%シャットするN95と呼ばれるマスクでも減らすことはできても完全に防ぐことは難しいでしょう。一般のガーゼマスクで呼気中のウイルスを防ぐのはほぼ困難でしょう。
このような不確かな情報、少し調べればおかしいなと思われる情報を拡散してはいけません。どうしても拡散したければ、まず自分で信頼できる情報源により、裏をとりましょう。
私は「呼気のろ過」による予防という目的でのマスクの使用はあまり期待できないと思います。実際、十分な装備だったと思われるダイアモンドプリンセス号の検疫官も感染しました。医療関係の方々の感染もニュースになっています。医療のプロが同じように感染するということは、人的なミスではなく設備(マスクなど)の機能不足を疑うべきだと思います。我々一般の者は、感染者のいるかもしれない人ごみを避ける予防対策を実践すべきです。
一方、飛沫感染を防ぐ効果はN95マスクでなくても期待できます。マスクもせずにくしゃみや咳をしている人のそばに行く場合には効果を期待できます。でもより効果的なのは、やはり、そのような人のそばに寄らないことです。患者さんのマスクは飛沫の拡散を抑えることでウイルス拡散防止の効果を間違いなく期待できます。だから、風邪気味の人、花粉症の人は周りを不安にさせないように、マスクをしましょう。
また、マスクをかけていると、ウイルスに汚染されている手指を口に触れさせない効果を期待できます。電車の手すりやつり革に付着しているウイルスからの感染の懸念される場合、そこに触れた手や指で顔の粘膜を触れる行為は危険です。その意味では、普通の手袋(例えば軍手)も同様に効果的です。手袋をはめた手でそのまま目や口を触らないでしょうから、有効な防御手段になります。
このように科学的に分析し判断すれば、これから本当に対策すべきことを明らかにできます。このように普段の生活に活かしてこそ実学です。
このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。
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