「『純水を飲むとおなかを壊す』という都市伝説(江頭教授)」に対する個人的コメント(片桐教授)
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先日の江頭先生のブログで「純水を呑むとおなかを壊す」という話しを取り上げられていました。「やっぱり私はやめておきましょう。君子危うきに近寄らず。敢えて毀傷せざるは孝の始めなり、ですよね。」ということで、江頭先生は自分で実験はされなかったようです。
一方、片桐は学生時代にこの都市伝説を聞いて、実際に自分で人体実験をしました。結論から言えば、お腹を壊して下痢しました。その顛末の紹介です。
飲用に供したのは当時でも少し古いといわれている、学生実験室の隅におかれていた、真鍮でできた古い「アランビック型蒸溜水製造装置」による純水でした。少し緑青が浮いていたことを憶えています。同種の蒸留水を作る装置は、今はほとんど使われていません。
その都市伝説を私に教えてくれた当時の分析化学のT先生の示した「お腹を壊す理由の作業仮説」は「水が純粋になれば、そのクラスターが大きくなり、腸壁から上手く吸収されなくなる」というものでした。今にして思えば、飲んだ時点で胃袋の中のいろいろな成分で純水ではなくなるので、そんな馬鹿なことはないとわかるのですが、まあ、そのときはだまされてしまいました。
蒸溜により出てきた水分をビーカー(コップを使わないあたりが…)で飲むと…、金属臭が口に広がりました。その日の夕方、私はトイレにこもっていました。絶対まねをしないで下さい!
今にして思えば、これは「純水」だからではなく、何か金属が溶け込んでいた、あるいは前に使った人が何か汚していたために、下痢してしまったのだと思います。ヤング片桐のアホな失敗談です。
では本当に純粋な水を得るにはどうしたらよいのでしょうか。
少し昔ならイオン交換水というのがありました。イオン交換樹脂をつめたタンクを通して、水中のイオンを除去した水ですね。最近なら逆浸透膜でろ過した水を実験に使っています。
一方で、10年ほど前に環境分析を専門に行なっている技官の方から、測定を行なう際の水として「六甲のおいしい水」が最適であるという話しを聞きました。中途半端な純水よりも純で安いそうです。
実験の次の日に実験結果とお腹をこわす理由は別であることを、都市伝説を教えてくれたT先生に報告すると、その先生は笑いながら、「そうか、じゃあ次は重水を飲んでみるかい。同位体効果(KIE)で何か代謝に影響が出るかもしれないね。体重も増えるだろう。でも重水は高いからなあ…」とおっしゃっていました。 今はそのようなお茶目な先生が少なくなりました。
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