「純水を飲むとおなかを壊す」という都市伝説(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
「都市伝説」というのはおかしいかな。「研究室(ラボ)伝説」とでも言うのでしょうか。研究室で先輩から後輩に語られる話には大切な注意事項や奥深い教訓に混じって真偽不明(おそらく偽)なお話が色々とあるものです。
私が学生のころに聞いたそんな「研究室(ラボ)伝説」の一つが表題の「純水を飲むとおなかを壊す」というもの。でもこれ絶対おかしいですよね。純水と普通の水の違いは微量の混合物があるかないか。主成分は水であることには変わりはありません。もちろん水が体に悪いわけはない。残りの微量な成分で問題が起こる、というのなら話は分かりますが、微量な成分がないことで問題が起こる、というのはどうにも考えにくいことです。
それに胃袋に水が入った状況を考えても、胃袋が空っぽ、なんてことがあるのでしょうか。胃袋の中にはもともと胃液があって、それに混ざったら微量成分が無いことなんて関係なくなってしまうと思います。
とは言えこれは机上の議論。科学者たるもの実験で確かめるのがあるべき姿でしょう。ここは純水を飲んでおなかを壊すかどうか確認するべきでは?
確かに正論です。が、やっぱり私はやめておきましょう。君子危うきに近寄らず。敢えて毀傷せざるは孝の始めなり、ですよね。
というか、「純水を飲んでおなかを壊すかどうか確認する」ことでこの「研究室(ラボ)伝説」の真偽を判定することはできないのです。人間には機械とはちがって心というものがあります。もし真剣に「純水を飲むとおなかを壊す」と信じている人がいたら、純水を飲んで本当に気分が悪くなるかもしれません。それが「おなかを壊す」という形で現れることもあるでしょう。問題なのは真剣に信じているかどうか、本人にも分かる保証がないということです。本当に「純水を飲んでおなかを壊すかどうか確認する」と思う様な人は心の奥底ではこの「研究室(ラボ)伝説」を信じているかも知れません。
いわゆるプラシーボ効果というものの一種ですが、この影響を防ぐためには純水と普通の水の二つのサンプルを用意し、どちらかが分からない状態で飲ませ、その影響の差を比較する、という手順が必要なのです。これを1人でやるのは相当難しい。「純水を飲むとおなかを壊す」ことの真偽を確認するためにそこまでする気にはならないですね。
PS:この話、本当は「ミミズにおしっこをかけると...」という都市伝説について書きたかったのですが、これはさすがに学科の公式ブログには不向きかと。でも心理的な影響はこちらのほうが出やすいのでは...やめておきましょう。
「日記 コラム つぶやき」カテゴリの記事
- 英文字略称(片桐教授)(2019.03.13)
- 地震と夏みかん(江頭教授)(2019.03.11)
- 追いコンのシーズンはご用心(片桐教授)(2019.03.07)
- Don't trust over 40℃!(江頭教授) (2019.03.06)
- 「加温」の意味は「温度を加える」?(西尾教授)(2019.03.04)