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デマを拡散してはいけない-10 もう少しの辛抱です(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。


 政府の外出自粛の要請から1週間が経ちました。私も在宅勤務になり、会話するのは家族とたまにスーパーへ買い物に行った時にレジのお姉さんだけになりました。これが、後3週間も続くと考えると「萎え」ます。

 ネットの掲示板を見ると、「このまま自粛をすれば経済が死ぬ。病死するか飢え死にするかなら、俺は病死を選ぶ。飢え死には嫌だ!。どうせ若者は死なないし。みんな、外へ出て経済を活性化しよう。」という匿名の主張が散見されます。この考え方にも一理あります。現状の自粛は「持続可能な発展」を放棄した状態であり、「サステイナブルではない」といえるかもしれません。でも、日本も世界もその道を選びました。サイは振られたのです。

 かなり前に、井上純一「キミのお金はどこへ消えるのか」角川書店というマンガの書評をこのブログに書きました(2018.10.30ブログ)。そこで、2つの経済政策、幕府—徳川吉宗の「倹約」と尾張藩−徳川宗春の「振興」を対比させ、「どちらも正しい、しかし、中途半端はいけない」と結論付けました。今回のコロナ肺炎騒動では日本も世界も「節制」によりコロナ感染を沈静化させた後に経済的なダメージをU字回服させる道を選びました。戦術としての節制と自粛です。
 本日15日の読売新聞(2020.4.15 13S 9面)にIMF成長予測の経済低迷の3つのリスクシナリオが掲載されていました。基本シナリオは最善のもので、「感染症の拡大が2020年後半に収束する」というものです。リスクシナリオ①は「封じ込め期間が基本シナリオよりも5割長くなる」、リスクシナリオ②は「2021年に第2弾の感染拡大がある」、リスクシナリオ③は「封じ込め期間が長期化し、(続けて)2021年に第2弾の感染拡大がある」、というものです。そして経済成長予測は、基本シナリオで、2020年は3.0%の下落、でも2021年は5.8%の成長、シナリオ①、シナリオ②では2020年は下落、2021年は基本シナリオより低いけどまだ成長、でもシナリオ③では2020年21年ともに3%程度の下落が続くという予測です。いずれにしても2020年の経済低迷は避けられない、しかし、2021年以降の経済状況はシナリオにより異なります。これは学生皆さんの就職にもかかわることであり、注視しなければなりません。

 このIMFの成長予測は、新型コロナ肺炎対策として「節制」を前提とした世界の流れを前提にしているので、「節制」を行なわなかった場合との比較はできません。しかし、「節制」を行なうなら、徹底して行なうことで、早期収束を目指すことの重要性を示しています。やるなら徹底的に行なうことを求めています。

 もはやサイは振られました。世界の方針が「節制」による早期収束と決めたのなら我々もその方針を守り、そのための努力(=引きこもり)を徹底するべきだと思います。ネット上の「経済を殺さないために、私は普段の生活を放棄しない」という主張は自分のストレス発散を正当化するための言い訳とも見なせます。一方で、私のこのような意見は意見の多様性への弾圧でもありましょう。しかし、今は多様性よりも一致団結して共通の敵と対峙すべき時ではないかと思います。
 我々はそのような易きに流れる主張に呑み込まれないように、揺らがないようにしましょう。やるなら徹底的にやらなければ作戦は失敗に終わります。少数でも裏切りで作戦は失敗に終わります。もう少しの辛抱です。あと3週間の辛抱と信じてがんばって引きこもりましょう。コロナから逃げ切りましょう。

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 心理学的に、今回の1か月という期間は、正直、我慢できるぎりぎりの線でした。もしこれが3か月とか半年なら、最初から自粛をあきらめ、私は普段通りの生活をしていたでしょう。「危機管理は最悪を想定するのが基本」です。したがって、まだ正体不明のコロナ感染症について、最悪を想定するのなら半年を想定するべきでしょう。しかし、あえて1か月と楽観的に想定し、その上で実現困難とも思える接触の8割減を打ち出したのは、政治家の大きな決断だったと思います。実際、政府と都の間ではその戦術に関して活発な駆け引きがあったようです。

 しつこいようですが、このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

片桐 利真

 

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