デマを拡散しないように-8 ロックダウンはデマだったか…(片桐教授)
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このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。
このブログを書いている8日の前日7日夕方に安倍内閣総理大臣はコロナ感染症に関して「緊急事態宣言」を発令しました。個人個人に「他者との接触を8割減らす」ことを「要請」しています。これまでも外出の自粛やイベント開催中止は「要請」されていました。強制力のない「要請」「指示」です。「命令」や「強制」による人権の制限ではないのは幸いです。
海外では「命令」や「処罰」のような強制力により個人の行動を制限しています。それと比較して日本の「要請」はマイルドです。実効については少し不安になるほどです。法治国家である日本では現状の法律上精いっぱいなのでしょう。それでも、7日夕方の時点で最寄り駅の近くのショッピングモールはスーパーと薬局と医院以外の部分閉鎖を検討していました。命令でなくても自粛する、要請でも素直に従う日本社会の「良さ」でしょうか、それとも「悪しき」同調圧力でしょうか。
1週間くらい前には、ロンドンやパリやニューヨークのように、東京都23区もロックダウン(都市封鎖)を行なうのではないかと危惧されていました。実際にはそれよりはマイルドな行動自粛の「要請」です。今のところ、鉄道の運休や道路封鎖の「要請」は考えていないとのことでした。
それにしても、先週末あたりに盛んに新聞やテレビで報道されていた「ロックダウン」の噂は何だったのでしょうか。我々もマスコミも一部の評論家の「ロックダウンされるかもしれない」というデマに振り回された形です。実際にこれからロックダウンするとしても、それは政府や地方自治体の「強制」ではなく、「要請」に鉄道会社等が答える形で実施されるのでしょう。今はマスコミもロックダウンとか都市封鎖ということばや表現を使わずに、これに関する報道の風化を待っているようです。
私は個人個人の行動自制・自粛が有効に働き、そのようなロックダウン状態は不必要になることを祈ります。
ロシアにおいて出回ったデマに対する政府による打ち消しは上手でした。
TBSの3月30日のニュースによると、「新型コロナウイルスの感染者数が急増しているロシアで、プーチン大統領が国民に自宅にとどまるよう促すため、街中に800頭のライオンやトラを放った」というデマと写真がインターネット上に出回り、これは「国民が恐れて街中に出られなくするためだ」といううわさが広がっていたそうです。 それに対して、ロシア外務省の報道官は、「それはおもしろい。ただ、人が街に出ないためには、(ライオンではなく)クマを放つほうがロシア流です」と真顔で冗談を打ち返したそうです。
このデマの打ち消しは、見事です。デマよりもインパクトのある冗談でデマを否定しました。プーチン大統領がクマに跨がり見回りしているイメージが、悪質なデマを吹き飛ばしました。
同じようなデマが2016年の熊本地震の時にもありました。町を歩き回るライオンの写真といっしょに、「動物園からライオンが逃げ出した」というものでした。このデマを流した男は逮捕されたようです。このデマはSNSで1万7千回もリツイートされたそうです。このデマはすぐにテレビニュースなどで否定されました。でも、デマ犯人の逮捕であの写真のインパクトを払拭できたのでしょうか。
ユーモアでデマを吹き飛ばす、犯人を処罰する、風化して消え去るのを待つ、デマの打ち消し方も様々です。
しつこいようですが、このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。
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