デマを拡散しないように-7 冷静に危険と不安を分別しましょう(片桐教授)
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このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。
コロナ騒動は社会不安をかき立てます。このブログを書いている4月7日夕刻以降に首相から「非常事態宣言」が出され、それに伴い東京都内ではゲーセンや飲み屋、ショッピングモールやホームセンターの営業自粛が「要請」されます。
でも,このような自粛は以前から要請されていたものですよね。何かおおきく要請の内容の変わるわけではありません。それでも、世間も世論もざわつき、それを見た人の不安感を煽ります。
工学系の方は、このようなときだからこそ冷静になりましょう。不安と危険を分別しましょう。安全工学の講義第4回を思い出しましょう。このような時に役立てるのが実学です。
危険は安全工学で扱うマターであり、「インシデントの発生確率」×「被害の大きさ」で定量的に扱うことのできる指標です。それに対して、不安は個人の心のマターです。この危険と不安を混同してしまうと、正しく判断できなくなります。しかし、そういっても、我々は身の回りの危険を自分の不安を元に判断・評価します。
社会学者のSlovicは小さい危険を103倍程度怖いと感じさせる11個の因子を報告しています。
- 被害が受動的な場合
- 被害を個人的努力で回避できない場合
- 被害が不公平な場合
- 未知・慣れない原因による危険の場合
- 異常な被害の可能性を持つ場合
- 人工的なものによる被害の場合
- 被害の発現までの長誘導期間のある場合
- 被害が未来世代にまで及ぶ可能性のある場合
- 被害者が身近にいる場合
- 原因などが科学的に未解明な場合
- 安全に関して矛盾する情報が提示される場合
<Slovic 他 1978>
今回のコロナ騒動、特に感染に関していえば、上記の1, 2, 4, 5, (7)に相当するために、危険を必要以上に怖く感じてしまいます。
本当はインフルエンザも同様に危険な感染症なのに、コロナウイルスは4番の「未知・慣れない原因による危険」であり、10番の「原因などが科学的に未解明」であるため、現時点でインフルエンザよりも怖く感じます。もちろん、インフルエンザのように特効薬やワクチンがないので、大流行したらインフルエンザよりも危険になる可能性を否定できません。
このコロナ肺炎を甘く見てはいけません。でも、正しく感染予防し、社会公衆衛生の規則を守れば、この後に十分に制圧できる疫病です。一方で、怖さが先行しすぎて正しく判断できなくなれば、その感染予防も崩壊します。
今は、どうすれば「みんなでHappyになれるか」を冷静に判断することです。
明日8日からはさらに社会生活を自粛しなければならないと思います。ストレスを感じて叫び出したい衝動や気持ちが沈んで鬱を感じる自分の心を抑えて、冷静に自分の身を律しましょう。外出の自粛だけでなく、手を善く洗い清潔を保ちましょう。栄養をとり、睡眠を十分にとり免疫力・抵抗力を高めましょう。自分のために、周りのために、日本のためにみんなでHappyになるために。
しつこいようですが、このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。
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