「アボガドロの法則」はヤバいよね。(江頭教授)
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化学を勉強した人間なら「アボガドロ」と来たら「6.02×1023」となるのですが、今回は「アボガドロの法則」のお話し。
例によって Wikipedia での説明を引用しましょう。「アボガドロの法則」は
同一圧力、同一温度、同一体積のすべての種類の気体には同じ数の分子が含まれる
という法則です。これは「倍数比例の法則」などと違って原子や分子の概念を知っていてもどうしてそうなるのか分からないのではないでしょうか。化学を学び始めた学生さんに、この「アボガドロの法則」を納得できるように説明するのは難しいと思います。
いえ、ダルトン、おっとドルトンの原子論とゲイ=リュサックの気体反応の法則を矛盾無く説明するための理論だ、という説明は問題ないのです。「同一圧力、同一温度、同一体積のすべての種類の気体には同じ数の原子が含まれる」と考えてしまうと気体反応の法則を巧く説明できない。だから分子という概念を考えて...、とその部分に注目すれば「アボガドロの法則」は分子の概念の必然の結果として理解できる。
でも、そもそもの疑問として「同一圧力、同一温度、同一体積のすべての種類の気体には同じ数の」何らかの粒子が含まれる、という仮説はどう納得すれば良いのでしょうか?
この点は私が学生の頃にも疑問に感じたところです。(と、思っているだけで無意識に記憶が改ざんされているのかも知れませんが…。)気体の体積と圧力と分子(あるいは原子)の個数の関係がこんなに単純だなんて。
これはもう、世の中そういうものだ、というか、自然はそんな風にできているんだ、と納得するしかない。「どうしてだか分からないけと、実験の結果そうなっているんだ」ということが根拠です。この意味での「アボガドロの法則」は何かから説明するものではなく、数学で言うところの「公理」に近いものとして受け入れるしかない。要するに「アボガドロの法則」は本当の意味で重要な法則だ、と当時の私は思ったのでした。
よく「事実は小説よりも奇なり」といいますが、「アボガドロの法則」がフィクションの中で語られていたら、こんな都合良い設定はあり得ない、と批判されたのではないでしょうか。いや、この設定はその後の物語の伏線に違いない、とい擁護する人もいるかも。
のちに「アボガドロの法則」は気体分子運動論によってその成り立ちが説明されることになります。この実際の展開をみると「アボガドロの法則」はまさに「その後の物語の伏線」の様にみえてきますね。
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