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「倍数比例の法則」とその例外 (江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今回は私が高校生のころのお話です。最初に教科書(参考書だったかな)で「倍数比例の法則」を知った時の話です。

 まず「倍数比例の法則」について。Wikipediaの記事(下図)にある様に、「同じ成分元素A、Bからなる2つの化合物X、Yを考える。この時、同じ質量のAを含むX、Yについて、X、Yそれぞれに含まれるBの質量は簡単な整数比をなす。」という法則です。この記事では具体例として一酸化炭素と二酸化炭素の例が挙げられているのですが、私が見た参考書では酸化銅の例が挙げられていました。これは歴史的な経緯を反映したものだったのですが、一酸化炭素や二酸化炭素の例に比べるとシンプルさに欠けるのでは。まあそれは数値が複雑だ、という程度の話なのですがこの参考書に例外として不定比化合物の説明まで書いてあったのです。

 一体何が言いたいのだろう?これが当時の私の印象です。

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 そもそも「倍数比例の法則」はわかりにくい法則です。いや、内容がわかりにくいのではありません。むしろその逆で、原子から物質が出来上がっていることを理解していればあまりにも当たり前です。なんでこれが法則と呼ばれるほど重要なのか、普通はわからないのではないかと思うのです。

 「倍数比例の法則」の意義は実際には原子論が受け入れられた経緯を説明するための歴史的な意味合いが大きいと思います。「倍数比例の法則が成り立つ、ということは原子があるってことだよね。」という感じですね。

 では「倍数比例の法則」の例外である不定比化合物が見つかったことで原子論が間違いだ、ということになったのでしょうか。

 原子論を支持する証拠は「倍数比例の法則」のほかにもたくさんあります。不定比化合物が見つかったからといって原子論を破棄するのはもったいない。だから不定比化合物を原子論の枠組みの中で説明しよう、説明できる、という形で理解されたわけですね。

 参考書を書いた人は読者が不定比化合物のことを聞いて「倍数比例の法則」に疑問を抱くことを予測してその説明をつけたのでしょうか。法則に対して例外を説明するのは普通は良いこと、というか必要なことですが「倍数比例の法則」が歴史の疑似体験を目的に教えられているとしたら、少しマニアックに過ぎるように、今は思います。


 おまけ

 今回調べて分かったのですが「倍数比例の法則」の発見者(提案者?)はあのダルトンだったんですね。これも昔参考書で読んだはずなのですが、すっかり忘れていました。私以外にも知らないひとも多いのでは。これはかわいそうですから「倍数比例の法則」は発見者の名前を入れるべきですよね。

 そう「ダルトンの法則」とか。

あれっ?

江頭 靖幸

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