「ボイル=シャルルの法則を生まれてはじめて使いました」(江頭教授)
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「倍数比例の法則」「ダルトン(ドルトン)の法則」ときて今回は「ボイル=シャルルの法則」について触れてみようと思います。今回も wikipedia から「ボイル=シャルルの法則」の説明を引用してみましょう。
気体の圧力P は体積V に反比例し絶対温度T に比例する
なるほど。「理想気体の状態方程式を知っていれば当たり前すぎてなんで法則と呼ぶのか分からない」とか「絶対温度って何よ。これって絶対温度の定義じゃないの」とか思うのですが、これは措くとしましょう。今回の紹介したいのは表題のセリフ「ボイル=シャルルの法則を生まれてはじめて使いました」というもの。これ、学生さんとガスクロでガスの組成を計る実験を一緒にしていたときに言われた言葉です。
ガスクロという装置にサンプルのガスを注入すると、そのサンプル内にどんな成分がどれだけ( mol数、おっと今は物質量ですね )含まれているかがわかる。そんな測定です。ガスの各成分の比率が知りたいだけなら、それだけでOK。でもサンプル内のガスの全ての成分を測定できたかどうか、を確認したいと思ったら装置に注入されたサンプルの量を調べて、それが各成分の量の総和と等しい(もちろん誤差があって正確に一致はしませんが)かどうかを検証する必要があります。
混合ガスをガス採取用のシリンジ(小さい注射器です)で決められた体積だけサンプリングする。これでサンプルの体積を決めることはできます。しかし、同じ体積でも温度の高い日はガスは膨張している。逆に寒い日ならガスは収縮しているので、体積を知るだけではサンプルの量を正確に求めることはできないのです。
そう説明をして、学生さんにガスクロでの分析時の温度と圧力を測定しておくように手順の説明をしました。そのときの学生さんのリアクションが「ボイル=シャルルの法則を生まれてはじめて使いました」となるわけです。
さて、このブログを読んでいる皆さんは「ボイル=シャルルの法則」を使ったことがあるでしょうか?授業や試験など「ボイル=シャルルの法則」を使えるかどうかを試す問題が出されれば使うのでしょうが、それ以外では使う機会がないのでは。
そもそも高校で化学を選択しなかった人でもちゃんと社会で生活できている訳ですから、普通の社会生活を送る上で「ボイル=シャルルの法則」が必要になる場面などないですよね。これは他の多くの「○○の法則」も同様でしょう。
でも大学に進んで研究をするようになるとふとしたタイミングで「○○の法則」が必要な場面に出くわすことになるでしょう。あるいは「○○の法則」が役に立つ場面、「○○の法則」で問題が解決する場面もあるかも知れません。学校で教えられる「○○の法則」の大部分はこのような、いつか役に立つかも知れないもの、です。表題のセリフは学生さんがその「いつか」にであった瞬間にたまたま私が立ち会ったという、ということなのでしょう。
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