「○○の法則」を暗記しておくべきか? (江頭教授)
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このブログで「倍数比例の法則」「ダルトン(ドルトン)の法則」そして「ボイル=シャルルの法則」について述べてきたので、まとめてコメントを一つ。
化学の教科書にはこのような「○○の法則」というのが結構な数でてきます。これらの法則はどの程度覚えておくべきなのでしょうか。
「倍数比例の法則」について紹介したところで述べたのですが、この法則は「原子から物質が出来上がっていることを理解していればあまりにも当たり前」で「なんでこれが法則と呼ばれるほど重要なのか」分からないと思います。 「ダルトン(ドルトン)の法則」も理想気体が何かを理解していれば当然のこと、「ボイル=シャルルの法則」の法則も理想気体の状態方程式の応用に過ぎません。
原子や分子そして理想気体というものはそもそも、これらの法則を統一的に説明する、もっと言うと個別の覚えなくても済むようにするために作り出されたものです。極論すれば、原子、分子、理想気体について理解していればこれらの法則は忘れてしまっても構わないと言えるでしょう。
では、なんで高校でこれらの法則が教えられるのでしょうか。覚える必要の無いものなのに。
答えは簡単で「原子や分子、そして理想気体」の概念を理解するためには「倍数比例の法則」「ダルトン(ドルトン)の法則」「ボイル=シャルルの法則」などを学ぶことが必要だからです。少なくとも、これら個別の法則について触れないで「原子や分子、そして理想気体」の概念を説明するのはかなり難しいでしょう。
物質というのは原子という粒でできていてね、原子というのはいろいろな種類があってそれぞれの種類で重さが決まっていてね、(いや本当は例外があるんだけど)それがくっついて分子(いや本当は分子という言い方が適切でないものもあるんだけど)というものになっていて、それで分子にもいろいろな種類があってね、同じ種類の原子からできた違う種類の分子をくらべて、そのなかに含まれるそれぞれの原子の重さ割合を比べると、これが簡単な整数の...
簡単じゃないよ!
「原子や分子、そして理想気体」は各種の法則を統一的に説明するモデルですが、そのモデルを学習するにはいくつかの法則を理解するところからスタートするしかない。だからテストには出ます。
でもモデルが理解できればそれぞれの法則は簡単にモデルから導き出せるのですから暗記する必要はない、ということですね。
追記:
「ドルトンの法則」をなんとなく「ダルトンの法則」と表記しているのですが、私も昔は「ドルトン」と習っていたはず。でもなんか頭に浮かんだのは「ダルトン」の方。そう言えば「ダルトン」のほうが「ドルトン」より耳に残っているのですが…。
そこで思い出したのが「株式会社 ダルトン」のこと。半導体製造機器や研究施設製品などの会社ですが、我々応用化学科の教員からすると実験室機器の会社、特にドラフトのメーカー、というイメージです。英語表記は DALTON CORPORATION なので ドルトンの法則のドルトン( John Dalton )と同じですね。応用化学科を立ち上げるときに学生実験室等にドラフトを入れたのですが、そのときに検討したメーカーの中に入っていたような。
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