においは宇宙空間を伝わるか(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
私が大学院生だった頃の話です。研究室の皆で「宇宙空間で匂いが伝わるか」という議論をしたことを覚えています。
なんでそんな話になったのか。前日くらいにスター・トレックというか「宇宙大作戦」の深夜の再放送があって、そのなかでミスタースポックが「宇宙では匂いは伝わらない」といった意味のことを話していたのが話題になったのです。(前日のTVの話で盛り上がるって、小学生か!)
先輩が言うには「これはおかしい。」「匂いの本質は嗅覚器官によるある種の分子の認識だ。」「音や熱と違って宇宙空間の真空状態は匂いの原因となる分子の移動にはむしろ好都合だ。」
そして
「ミスタースポックの発言は非常に非論理的だ...。」
いや、確かにその通りだがそれはあまりにも、とドクターマッコイみたいなツッコミを入れることとなりました。
さて、現実的に考えると宇宙空間で匂いが伝わるか、といえば答えはNOでしょう。人間の鼻の匂いを感じる機能は空気の無い状態で正常に機能するとは思えません。宇宙空間を越えてどこかから匂いの分子が飛んできたとしても人間の鼻と真空を隔てる障壁で匂いの分子も遮られてしまうでしょうから。
とはいえ、先輩の言い分にも正しいところはあります。匂いの原因物質である分子の移動にとって他の分子、空気の場合は窒素と酸素の分子の存在は邪魔でしかありません。真空中であれば分子はその温度での熱運動速度で直進することになります。分子の熱運動速度は音速とほぼ同程度ですから匂いの伝わる速度としては異常な速さだといえるでしょう。もっとも匂いの原因物質の分子は窒素や酸素より複雑で分子量の大きい分子だと思われます。熱運動速度は温度が一定なら分子量の平方根に反比例するので音速よりはややゆっくりになるかも知れません。
さて、また大学院生時代の表現に戻りましょう。
「空気がなければおならの音がするのと同時に匂うんだよ。」
いや、確かにその通りだがそれはあまりにも…。てか空気がなければ音が伝わらないじゃん。
PS: 今考えるとこんな考えもあるかも。日本人なら梅干しの写真を見ると口の中が酸っぱくなった様な感じがする、という経験をしていると思います。何かの視覚情報によって脳の嗅覚を感じる領域が条件反射的に反応する、というような機構を考えれば匂いが宇宙空間を伝わる、という表現も成り立つのでは。宇宙に見た目が梅干しそっくりの惑星が浮かんでいてミスターカトーが酸っぱい匂いをかんじるとか、ですかね。
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