化学棟のにおい(江頭教授)
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先日、自分の住んでいるアパートのエレベータで「ベランダでたばこを吸わないでください」という管理会社の張り紙を見つけました。ベランダでたばこを吸うと匂いが他の部屋のベランダに干してある洗濯物に移る、とか換気をするとき匂いが入ってくるとか。まあ、迷惑なので止めてくださいということでした。ああ、コロナウイルス問題で在宅勤務になった人が家族のてまえベランダでたばこをすることになったのかな。などと想像してしまいましたが、はて実態は如何に。
さて、「におい」問題が出てくれば化学関係の人間は誰でも一家言あるのではないでしょうか。
私が学生だったころ、というか大学に入って化学系に進学して「工学部5号館」という、いわゆる化学棟に通うようになったころですが、化学の研究室、もっと言うと有機化学の研究室のある階には、なんというか独特に匂いがあったものでした。研究室が発生源なのでしょうが廊下までまん延していて、エレベーターに乗っていても「その階で扉が開くとにおう」というレベル。今考えると「これは体に悪いのでは」と思うのですが、当時は「ああ、化学棟のにおいだなあ」などと気にもしていませんでした。
もちろん、これは昔話です。今の大学でそんな強いにおいがしていたら、皆で「なんだ、なんだ」「事故があったのか」と廊下に人があふれることになるでしょう。
沸点が低い、というか蒸気圧の高い有機化合物を扱う際には空気を吸引する機能のついたドラフトという装置の中で実験操作を行うことになっています。また、例えば我々応用化学科が所属している片柳研究棟は高層ビルでもあるので通気口やブロワーなどの空調施設が整備されています。部屋の空気は常に入れ替わるように設計されているのでにおいの原因物質が部屋や廊下に溜まることなく排出されるようになっています。
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