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究極の和菓子は「金つば」だと思う(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログ記事の内容は私(江頭)の個人的意見であり、学校法人片柳学園、東京工科大学、あるいはその一部(工学部、応用化学科)の組織としての意見をかならずしも反映するものではありません。

 さて予防線を張った上で炎上覚悟で一言。「和菓子の美味しさとは要するにあんこの美味しさに尽きる」というのが私の持論です。(異論は認めますが。)

 で、それを前提として考えると究極の和菓子は「金つば」ということになります。(至高の和菓子かどうかは別として。)なにしろ、あんこを食べやすくするためだけに作られていますからね。「もなか」もいい線いってますが、あれは皮の食感が立ち過ぎている。薄皮饅頭は皮が悪目立ちしていない点は認められるものの、球形に近いその形状ではたとえ最密充填をとったとしても、そのあんこ充填密度において「金つば」に比するべくもない。実際金つばを越えるにはあんこをそのまま食べるしかないでしょう。いや、それも良いかな。だとすれば究極の和菓子は「あんこ」そのものではないだろうか。

 さて、あんこは何からできているのでしょうか。あんこは小豆を煮て作る、と思った人。分かっていないなあ。あんこは主に砂糖でできているのです。小豆を煮て砂糖と混ぜるのですが、その際の砂糖の量が半端ない。半々どころか砂糖の方が多いくらいの勢いで砂糖が入っているのです。

 だとすれば究極の和菓子は「砂糖」ではないのか。それも砂糖の結晶である氷砂糖こそが真の究極の和菓子...と思って実際に食べてみると、氷砂糖って後味が悪いんですよね。

 馬鹿話はさておいて、砂糖の代用品として「アスパルテーム」などの人工甘味料がつくられ、その使用量は甘み基準ならアスパルテームだけで砂糖の5%に達しているという話を紹介しました。でも上述の「あんこ」などは人工甘味料では代替できない用途もあります。実際、日本人の砂糖の使用量はどのように推移しているのでしょうか。

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 金井道夫氏は「わが国砂糖消費の特徴 」(農業総合研究 21(4), 113-147, 1967-10)において国税局のデータ等から明治41年から昭和40年までの1人あたりの砂糖消費量を算出しています。明治末から大正初期には1人あたり 3-4 kg だった消費量は昭和16年には16.40 kg に到達しますが、以後激減して昭和21年には 0.21 kg に落ち込みました。これはもちろん先の大戦の影響ですね。その後回復した砂糖の消費量は昭和37年(私の生まれた年です)には昭和16年の値を超え、昭和40年(1965年)には 18.94 kg となっています。 

 農林水産省の資料「平成30砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し」にはその後の推移が示されています。1972年ごろに1人あたり約 30 kg に到達しますがが、それ以降減少をつづけます。そして「農畜産振興機構」の最新の統計データによれば2019年度は 16.0kg であり、戦前のピークをも下回るレベルとなっています。

 ピークがバブルの絶頂と言われた1990年よりずっと前に来ているのが興味深いですね。砂糖の消費量についてはバブル崩壊の経済的な影響より人工甘味料の導入や嗜好の変化の効果が大きいのでしょう。よく言いますよね。「甘さ控えめでおいしい」って。

(いや、あんこはあれだけ砂糖が入っていても「おいしい」と思うよ。)

江頭 靖幸

 

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