日本人はどのくらい砂糖を消費しているか(江頭教授)
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今回は前回も紹介した農林水産省の資料「平成30砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し」に示された1人あたりの砂糖の消費量について別の観点から紹介してみましょう。前回は日本の1人あたりの砂糖の消費量がどう変化したか、時間軸で考えたのですが、今回は世界各国との比較です。
ちょうどそのものズバリのグラフが載っていたので以下に引用しておきます。
まず一目して分かるのは日本が砂糖を食べない国だということです。アメリカ、カナダやEUの半分程度。オーストラリアと比較するとほぼ三分の一といっても良いくらいです。
もう一つ。グラフの横軸に注目してください。基点が1956年ですから約60年間の長期の需要変化のグラフです。その観点でみると日本がタイや韓国にも追い抜かれていて、中国からも追い上げられている状況がわかるでしょう。
よく見るとオーストラリア、アメリカ、カナダやEUなど、砂糖の消費量が大きい国も砂糖の消費量が減少する傾向にあります。とくに1980年を中心とする10年間のアメリカの減少は劇的です。
いわゆる発展途上国で消費量が増え、先進国では消費量が減る。これが全体的な傾向だとすると、日本は1970年ごろまで発展途上国型で砂糖の消費量が増えたが、その後先進国型に転じて減少するという経過です。1970年ごろまで日本の高度経済成長が続いていたのですから、この見立てには説得力があると思います。
「平成30砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し」10ページ
さて、同様の国際比較のデータは農畜産業振興機構からも公開されています。こちらはもっと多く40カ国ほどのデータが示されているのですが、その中でもやはり日本の砂糖の消費量は少ない部類です。実際、日本より消費量が少ない国は中国(11.6 kg/人)だけ。1人あたり 20 kg を下回っている国も他にベトナム( 18.8 kg )があるだけなのです。
結局、日本人の砂糖消費量は、他の国々と傾向は同じだと言えそうです。でも、絶対値はやはり少ない。これは日本の特徴だと言えるのでしょうが、果たして何が原因なのか。単に価格統制の結果なのかも知れませんが、理由は断定できないですね。
(おまけ)砂糖を1人あたり141.6 kg(日本の約9倍)使う国があるそうです。「エスワティニ」と言って通じるでしょうか。昔の「スワジランド」で南アフリカの隣国です。この国では砂糖の生産が主要な産業となっているとか。でもいくら何でも食べ過ぎでは。
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