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明治維新と産業革命(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 私が小学校の5年生か、6年生だったころの話です。歴史の授業で先生が「明治維新で人々の生活は良くなったか、悪くなったか」という質問をクラスに投げかけました。「鉄道ができた」から良くなった、「戦いがあった」から悪くなった、などなど、いろいろな意見がでました。今ならさしずめ「マイケル・サンデル風」とでも言うのでしょうか。もう40年以上前なのですが先進的な取り組みだなあ、と思い起こしています。(いや、手法自体はソクラテスの頃からあったのか。)

 さて、当時の私の意見は「変わらない」。だって鉄道ができたのは新橋あたりだけだし戦いといっても地域限定的なもの(江戸城の無血開城のことなど知っていたのでしょう)で、当時の日本人の大半にとっては「何々?」くらいだったのでは、というものでした。(いやなガキだ。)

 クラスとしての結論は「良くなった点もあるし、悪くなった点もある。」でした。明治維新は歴史の大きな転換点です。その瞬間には大きな変化は無くても、そこを起点にいろいろな変化が起こった。変わったことには良いことも悪いこともあるのですが、少なくとも「変わらない」ということは無い。今考えてみると、当時の私の意見は全否定されていますね。(当時は気がつかなかった様な。)

 さて、この質問、今の私が答えるとしたら「良くなった」、いや「圧倒的に良くなった」です。

Meijijoukyou

 何故か。理由は簡単で「明治維新」が実質的に日本における「産業革命」の始まりだからです。

 「明治維新」は1853年の黒船来航から1868年の明治元年までの出来事です。一方の産業革命の始まりは判然としませんが、例えば蒸気機関を実用的なものとしたと言われるジェームズ・ワットが「ボールトン・アンド・ワット社」を創立したのは1775年でした。「明治維新」と「産業革命」には100年とは言いませんがかなりの時間のずれがあります。

 しかし日本国内に限定して考えると、産業革命以降の技術に人々が触れるようになり、その恩恵を受けることができるようになったのは明治維新以後です。明治維新は狭い意味では統治機構の改革なのですが、その功績は産業革命の成果を導入したことでしょう。もっと言えば産業革命の成果を取り入れるための改革が明治維新の本質だ、と言えるのではないでしょうか。(言い過ぎか?)

 明治維新を起点として人々の生活は大きく変化しました。その変化をもたらしたのは産業革命で実現された技術の利用であり、それによって人々の生活は圧倒的に良くなった。変化の中には悪いものもあったかも知れないが、それは技術の恩恵に比べたら微々たるものだ。

 以上が私が「明治維新で人々の生活は圧倒的に良くなった」と考える理由です。「産業革命のもたらした技術で人々の生活は圧倒的に良いものだ」ということが前提となっていますが、この点についてはまた稿を改めて説明したいと思います。



江頭 靖幸

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