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映画「妖星ゴラス」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 以前このブログにて紹介した映画「地球最後の日」では地球が太陽系に侵入してきた遊星と衝突して破壊される、というまさに天文学的な確率の事象を想定したSF映画、いや、空想科学映画でした。地球を脱出するロケットを建造した人々は若者たちをそのロケットに乗せて破壊された後に地球の軌道にのこる遊星の伴星へと移住させる、というストーリー。その時、この映画のポイントは

この映画で中心的に描かれているのは宇宙船の建造には数百人のスタッフが必要だが、その宇宙船の乗れるのは数十名のみ、という状況です。

と書きました。

 その「地球最後の日」から11年後の1962年に作成された本作「妖星ゴラス」も、同様の状況を扱った日本映画です。

 「ゴジラ」をはじめとする特撮映画で有名な円谷英二氏が制作かかわった作品だけあって、特撮映像の大盤振る舞い。「地球最後の日」に比べると、これでもかとばかりに驚きの映像が次々と出てきます。もちろん、現在の目から見ると、というかおそらくは当時から見ても、見るからにミニチュアワークの映像であり、リアリティがあるとはとても言えません。しかし、少なくとも私にとっては、その映像のタッチに懐かしさを感じるとともに、それだけのミニチュアが作られたという圧倒的な作業量に対する感銘が合わさって、ワクワク、ドキドキの映像の連続でした。

 さて、天文学的な事象によって地球が破壊される、という危機に際して「地球最後の日」で描かれた上記のジレンマに対して「妖星ゴラス」ではあっと驚く解決策が示されています。(「続きをよむ」以降にはネタバレを含みます。)

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 地球の動かしてゴラスの軌道から逃げる、というのがこの映画が示す解答です。

 いや、本当にそういう話なのです。奇想天外な展開ですが、これが意外と抵抗なく受け入れられました。おそらく、劇中で「地球を動かせばいいのだ!」「な、なんだってー!」という展開がなくて淡々と話が進むからでしょうか。というか、この作品は全体として淡々と話がすすむように感じます。そう「プロジェクトX」みたいな感じです。

 たとえば、地球を動かすために世界の技術と資源を集めて南極に巨大な噴射口群を建造するのですが、国連での議論ですぐに世界が一致団結し世界中の科学者も力を合わせて働くのです。人類の危機なら当然そうすべき。それはそうですが、2020年の今となっては国連がそのように機能するとは到底思えないですよね。

 作中、地球を40万km移動させる計画が実施されたのですが、以前、このブログで提案した温暖化問題解決のための地球の軌道変更では移動距離は200万kmでした。しかも移動方向は地球に公転面に沿った方向である必要があるので、南極に噴射口を建造することはできませんから、この映画の方が「リアル」なのですね。

 さて、この映画のラスト、ゴラスによる地球最後の日は避けられたものの東京の街は水没していました。それを見た登場人物たちは絶望に打ちひしがれるわけでもなく、新しい東京を造ろう、と生き生きと語るのです。この映画が1962年に作られたこと、その影響が一番表れているのはこの自信に満ちた明るさなのかもしれません。

 なお、以前紹介した「世界大戦争」は円谷英二氏がこの前年の1961年に作成した映画です。円谷英二氏はこの2作と並行して怪獣映画「モスラ」「キングコング対ゴジラ」も作成していました。まさに円谷英二氏の絶頂期に作成された作品なのです。

江頭 靖幸

 

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