デマを拡散してはいけない-15 誤解の生まれ方、マスクの着脱に関する話題(片桐教授)
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このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。
マスクについては以前にも話題にしました。(http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2020/03/post-7c4f33.html)
このCovid-19は最小発症病原体数の小さなウイルスであると考えられています。したがって、その感染は確率的です。マスクには飛沫をある程度防ぐことにより、感染確率を下げる効果を期待できる一方で、鉄壁ではありません。
最近、マスクの予防効果について、誤解を生み易い報道を見かけました。少し前の記事ですが「マスクに予防の証拠なし 政策決定には注意を―WHO」という見出しのネットニュースを見かけました。
この見出しからだけでは、天下のWHOが「マスクには予防効果はない」と表明したように取れます。しかし、その内容を読むと、「感染者が医療用マスクを着用することで、他人に飛沫(ひまつ)感染させるのを防ぐことは各種研究で示されていると説明。一方、健常者が家庭内などでマスクを着用することで一定の予防効果があることを示す「限られた証拠」はあるものの、地域全体での着用で「新型ウイルスを含む呼吸器系の感染症を予防できる証拠はない」と結論付けている。」と書かれています。あれっ?。タイトルと内容が異なるように見えます。
「感染予防に効果があるのかないのか、どっちやねん。」と突っ込みたくなります。この記事によると、WHOの結論は、医療用のN95マスクは一般の予防用ではなく、「医療従事者に優先的に配分されるべきだ。そのように政府関係者は取りはからえ」、ということです。WHOの発表は、社会の構成メンバーひとりひとりに向けたものではなく、政策への提言です。
世間には「ゼロリスク幻想」がはびこっています。完璧な対策でなければやらないのといっしょと誤解されている方が多くおられます。感染を確率で定量的に考えずに、定性的に「防げる・防げない」と二極化して捉えています。このタイトルの付け方は、そのような定性的な考え方によるものに見えます。(ブログ2016.8.24 http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2020/03/post-7c4f33.html)
マスクはTPOを考えて使いなさい。ということのようです。当たり前と言えば当たり前のことです。しかし、この記事のタイトルは「マスクには予防効果はない」という誤解を招きやすそうです。
マスクの着脱については、6月に環境庁と厚労省が「マスクをはずしましょう」という熱中症予防キャンペーンをしています。
これもまた「むやみやたらにマスクをはずしましょう」ではなく、「屋外で他者と2m以上の距離を保てる場合はマスクをはずしましょう。」という、当たり前のことを謳っています。要するに「TPOに応じてマスクを着脱しましょう。」「マスクの使用には頭を使いましょう」ということですね。
このような記事やポスターを見かけると、誤解無く伝えることの難しさを思い知らされます。
このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。
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