デマを拡散してはいけない-14 新型コロナ感染症の後遺症について(片桐教授)
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このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。
新型コロナウイルス感染症に関してネットなどには「20代30代の人は死ぬことは無いから、怖がるのはばかばかしい。新型コロナはただの風邪だ。」という意見が散見されます。私はこの意見に反対します。確かに、厚生労働省8月5日の資料では死亡者はほとんど60歳代以上です。
しかし、まだよくわかっていないcovid-19という感染症を甘く見るのは危険です。われわれはまだこのCovid-19というウイルスを十分に理解できていません。そして、まだインフルエンザのタミフルのような特効薬やワクチンを我々は持っていません。そのような現状で新規感染症を軽く考えるのは危険です。
最近マスコミやネット上にCovid-19感染症の「後遺症」の話しが出てきました。もし報道されている後遺症の話しが本当なら、この新型コロナウイルス感染症はQOL(Quality of Life)を大きく下げる病気です。たとえ死ななくても後遺症を抱えることから、Covid-19感染症は、特に若者にとって危険な病気と言えます。
報道によると、Covid-19感染症は全身の血管に炎症を起こすそうです。(現代ビジネス「なぜか日本で報じられない「コロナ後遺症」、世界で次々と明 らかに...!」2020年8/23(日))その後遺症は疲労、呼吸困難、関節痛、胸痛といった症状だそうです。特に疲労感は生きる気力を奪います。(週刊朝日「「死ね」コロナ感染の男子高生に批判殺到 患者の苦しみと後遺症のリアル」(2020年9/8(火))
インフルエンザやこれまでのコロナウイルス感染症では起こらなかったこのような後遺症はどのように起こるのでしょうか?。
例えばインフルエンザウイルスは喉の細胞に特異的に取り憑きます。これはのど細胞特有の細胞接着分子を足がかりにウイルスが感染するからであると、言われています。高病原性鳥インフルエンザ(H1N5)はまだヒトに感染しません。これは、幸いにヒトの細胞はこの足がかりになる細胞接着分子を持たないからです。もしそのような高病原性鳥インフルエンザウイルスが変異してヒト細胞に接着できる能力を獲得したら、インフルエンザパンデミックになります。
このCovid-19やSARSウイルスは、ヒト細胞のACE2という酵素を足がかりに細胞へ感染します。(ブログ[2020.04.14]「デマを拡散してはいけない-9 イブプロフェンとコロナウイルス-2 LancetのCorrespondenceの紹介」参照)ところが、このACE2は咽頭つまりのどだけではなく、肺や腎臓や血管内皮細胞にも出現します。つまり、そのようなACE2を足がかりに、このCovid-19は肺や腎臓だけでなく、広く全身の血管に感染できるウイルスだということです。これは、これまでの季節性インフルエンザやコロナ風邪と大きく異なるところです。
血管の病気といえば「動脈硬化」をすぐに想像しますが、このような血管の炎症はむしろ「糖尿病」に似ています。ざっくりと言えば、糖尿病では血中の過剰の糖分が活性酸素を作り血管を痛めつけます。Covid-19の場合、ウイルスに感染した血管を白血球は活性酸素を使って攻撃し、そのために同じような症状になると予想されます。
だから、これからの長い人生を快適に過ごすために、特に若い人はCovid-19感染のリスクを可能な限り避けるべきだと私は思います。
このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。
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