デマを拡散してはいけない-16 誤解の生まれ方-2、「空気感染」ということば(片桐教授)
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このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。
最近、ネットニュースで「新型コロナウイルスが空気感染する」という記事を見ました。例えば、本日のウエブニュースでは「新型コロナが空気感染し得るとの指針、米CDCがサイトから削除」というこのような空気感染の可能性をアメリカ疾病対策センター(CDC)が発表したことを取り消した、という記事がありました。[https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-22/QH0QGNDWLU6W01]
この記事の内容は、他のネットニュースでも記載されています。Yahooニュースでは「米CDC、エアロゾル感染警告を撤回 「草案を誤掲載」」と書いています。[https://news.yahoo.co.jp/articles/e6aac0cf863c2ee5dcc07f15c6612c1a4faefdde]
先の方の記事を読むと、タイトルには「空気感染」と書かれていますが、本文中には「アエロゾル感染」と記載されていました。
日本では「空気感染」というと、「飛沫核感染」だけをさします。一方でAirborne infection ということばは「飛沫核感染」に加え、「アエロゾル感染」や「微細な飛沫感染」など、日本では飛沫感染に分類される感染経路も含まれます。ところがこのAirborne infection をGoogle翻訳にかけると「空気感染」と訳されてしまいます。つまり、日本語と英語のニュアンスの違いを理解せずに機械翻訳を行なうと、間違ったタイトルの記事を書いてしまうことになるということです。
日本語の定義の場合、空気感染を起こすことが知られている感染症は、結核、麻しん、水痘の3つだそうです。インフルエンザやコロナウイルスなどは飛沫感染を起こしますが空気感染は起こしません。
日本では、空気感染、飛沫感染、接触感染の用語があります。これらはそれぞれそれらへの対策も設備も異なります。ウイルスの空気感染の場合、N95マスクは予防対策に必須です。一方、飛沫感染はサージカルマスクである程度防げます。対策が異なるということです。だから、ことばを厳密に使わないと、余計な誤解と混乱を招くということです。
「コロナウイルスは空気感染を起こす」という誤解をしてしまうと、「だから予防対策としてのサージカルマスクには意味が無い」、というある種、誤った結論に至ります。
世間に広まる誤解はこのようにして生まれるのかなあ、と私は思います。
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