ペーパーレス化は本当にできるのか?。(片桐教授)
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新しい内閣になってから、急速に書類手続きの簡素化の検討を進めている。ハンコの廃止、ファックスの廃止等々、これまでの書類という手段をトップダウンで大きく見直すよう提案されている。
一方で、私はパソコンの画面上で学生さんのレポートを読むことに抵抗を感じる。抵抗を感じるというか…、読み間違いを起こし易い、正しく採点できないと感じている。そのため、電子版で提出されたレポートでも、紙に印刷してから採点している。極めて非効率的である。しかし、実際に、パソコンで読んだ時は気づかない問題点を紙版では見つけてしまう。パソコンの画面で読んだ時に読み間違いし易い、甘い採点になるのはなぜだろうかと思い続けてきた。
先日、リコーのWeb Page上に面白い文章を見つけた。
「河内康高「「紙」に印刷すると間違いに気づく理由」 2020.9.14 https://blog.ricoh.co.jp/RISB/new_virus/post_604.html」
この文章は脳科学的にパソコンで文章を読んだ時と、紙の文章を読んだ時の違いについてのマーシャル・マクルハーンの学説を紹介している。
カナダのマクルハーンは紙のほうで間違いに気づきやすい理由は「反射光」と「透過光」の性質の違いによると考えたそうである。紙に印刷して反射光で文字を読む際には、人間の脳は「分析モード」になる。目に入る情報を一つひとつ集中してチェックできるため、間違いを発見しやすくなる、そうだ。
一方で、画面の発する透過光を見る際、脳は「パターン認識モード」になる。送られてくる映像情報などをそのまま受け止めるため、脳は細かい部分を多少無視しながら、全体を把握しようとする。細部に注意をあまり向けられないので、間違いがあっても見逃してしまう確率が高くなるそうである。この理論についてはいろいろな考察や反対意見もある。
確かにパソコンの画面とテレビの画面を見るという行為は似ている。テレビを見る時は決して能動的では無い。受動的である。本や論文を読む時は能動的でなければ頭に中身は入ってこないし残らない。だから論文を読むとき。私は必ずpdfをダウンロードし、これを印刷して読んでいる。でも、非効率的だ。紙の無駄になる。
最近は電子ブックなどの透過光の「書籍」も増えてきている。若い人はパソコンどこかスマホでラノベを読んでいる(ようだ)。もはや、透過光だ、反射光だというような媒体の性質の問題だけではなく、個人の習慣の問題なのかもしれない。
私の場合、本反応動的に読むが、テレビを能動的に読むことは無い。だから、パソコンの画面を見る時も、能動的であろうとしても、どこか受動的になっているのかもしれない。私はペーパーレス化に取り残されてしまうのではないかと、恐怖を覚える。しかし、学生さんはそのようなパソコンの画面を読む方法で論文の中身をしっかり把握できているのだろうか?。これはまたまったく別の話しかもしれない。
あなたはパソコンで誤解無く論文を読めますか?。
パソコンで書いた文章を印刷せずに推敲できますか?。
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