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「オンライン授業」について考えてみる その2 (江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前回に引き続いて「オンライン授業」について考えてみましょう。今回想定するのは大教室でたくさんの学生を相手にする授業です。この手の授業は「マスプロ授業」、つまり大量生産のような授業と言われて教育効果に疑問がある、とされてきました。では、これをオンライン化するとどうなるのでしょうか。

 いままでやっていた授業を映像にとってそのまま流す、それが一番簡単なオンライン化でしょう。その場合、話を聞いている学生は完全に聞いているだけの状態になります。他の学生と私語をしない分だけ教育効果がある?いえ、学生さんがオンライン配信を聞いている正にその機械は誘惑に満ち満ちているのです。本人にやる気が無い場合は教育効果はないのでは。(まあ、本人にやる気が無い場合はどんな方法でも教育効果は無いのですが。)

 ということで、学生には自分で文章を読んでもらいましょう。読む作業は映像を見たり音声を聞いたりするよりもずっと能動的な作業ですからちゃんと頭に入るでしょう。いままで使っていたスライドに解説文をつけて、それを読んでもらう。分からないところは教科書を参照してもらいましょう。

 これにプラスして課題もやってもらいます。授業で取り扱ったテーマについて独自に調べて簡単なレポートを書く、というもの。こらなら学生も遊んではいられません。うん、これで対面授業を越えるオンライン授業の完成だ。Online_school_girl_20201004111801

 と、思っているのは多分先生だけなんですよね。

 実際にオンライン授業が始まってみるといろいろな問題が明らかになってきます。

 オンラインの、それもリアルタイムではないオンデマンド型の授業では時間の制限がありません。あまり短く終わっても困る、と考えて教員はいろいろコンテンツを盛り込むのですが、どんな課題でも学生にその気が無ければ次々と「処理」されるだけで教育効果は少ない。これは予測の範囲内ですが、問題はその反対側にあるのだと思います。

 前回も指摘したのですが、受講生の中にこちらの想定以上にオンライン授業に長い時間をかける学生がいる、ということが分かっています。授業の内容に興味をもってくれて、よく調べたレポートを出してくれる。だから時間もかかる。それの一体何が悪いのか。教師もハッピー、学生もハッピー。教育の効果が上がるのは結構なことでしょう。

 確かに一面ではそうなのですが、どの学生にも1日は24時間しかない、ということを思い出してください。どの授業、どの科目にも奥深い内容があるはずで、その気になればいくらでも時間を費やすことができるのです。ある授業に熱中して他の授業がおろそかになる、ならまだ良い方です。全ての授業に熱中したら生活が破綻してしまいます。

 授業のオンライン化は我々教員にもう一度授業を客観的に見る機会を与えてくれました。それによって授業改善を目指すようになる自然なことです。でも、そこで間違えてはいけません。改善とはかならずしも教育「効果」の向上ではありません。本当に目指すべきなのは教育「効率」の向上なのではないでしょうか。

江頭 靖幸

 

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