「オンライン授業」について考えてみる(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
今回のタイトルは少し曖昧ですね。「オンライン授業」にも色々あります。大学の専門科目に限っても数百人をあつめて行う講義から完全にマンツーマンの卒業研究まで、一概にまとめるのは不可能でしょう。
ということで、ここでは一クラス数十人くらいの授業、それも小テストや演習が比較的多い授業を想定して「オンライン授業」と普通の授業を比べてみたいと思います。
まず、今までの授業はどうやっていたっけ?教科書を使った授業だったから、授業のWebサイトに「本日は○○ページから××ページまでを自習しなさい。」というのが最もミニマムなやり方。でも、さすがにこれはないでしょう。
手元にはいままで使っていたスライドがあります。これも授業のWebサイトにアップロードしてみます。うーん、スライドを見るだけならあっという間に終わってしまう。逆にスライドを詳しく読み込んでいくといくらでも時間がかかる上に曖昧な部分も多い。本来のスライドの使い方を考えればスライドには音声の解説をつけるとか、文章で説明文をのせるとかしないと。
今までの授業では課題をノートの答えさせたり紙に書いて提出させたりしていました。Webで解答できる小テストやレポート提出を加えてみましょう。小テストは自動採点されますから、生徒さんはすぐに結果を確認できます。うん、これで対面授業で行っていたことは大体オンラインに反映できたぞ。
と、思っているのは多分先生だけなんですよね。
実際にオンライン授業が始まってみるといろいろな問題が明らかになってきます。
まず、授業の中の時間配分のこと。ものすごく時間がかかってしまう学生さんがいる、という問題です。リアルの教室で行っている授業であればスライドの情報がながれてくるスピードは皆一緒。課題の開始も一緒です。もちろん、課題を早く終わらせる学生さんもいますが、その一方で時間のかかる学生さんも。でもある程度時間が経つと「はいここまで」となりますよね。
小テストについては、教科書の指示は実は意外と曖昧だ、という問題もあります。たとえば穴埋め問題など。数値に誤差範囲がある、程度の事なら学習支援のシステム(本学では moodle を使用)がサポートしてくれますが、「二酸化炭素」なのか「CO2」もOKなのか、あるいは「CO2」も許されるのか、など、語句の穴埋め問題の場合は解答の範囲を設定して、それを学生に予め伝えておかないといけない。でもそれをやったらほとんど解答を教えているようなものです。おそらくリアルな教室での授業の際には、学生の様子を見ながら教員側がそれとなく正解の範囲を伝えているのだと思います。(あるいは正解の範囲を臨機応変に変えているのでしょう。)
そして、授業の流れ、というか段取りがわかりにくい、という問題も。リアルな授業では一連の話が続いた後で「さて、ここからは...」などと授業の流れが変わる部分があります。その際、おそらく教員は口調を変えるとかジェスチャーを入れるなど、話している文言以外の部分でも流れが変わったことをアピールしているのだと思います。
スライド資料や動画はいくつかの章に分割して、所要時間の目安を示す。Webの小テストでは選択式などを利用して曖昧な解答を制限する、分割された資料や小テストを順番に並べるだけでなく、それぞれの資料にどのように対応すれば良いか、という情報をまとめた「授業の受け方」を別途説明する資料をつくる、などオンライン授業を成立させるためにはもう一段の手間が必要なのでしょう。
さて、こんな工夫をした上で、という条件付きですが私はオンライン授業も良いのでは、と考えています。時間がかかりすぎるひとがいる、という問題は裏を返せば早く終われる学生さんはいままで時間をロスしていたという事かも知れません。問題の曖昧さは本当はいままでの授業でも良くない部分だったのであって、それがオンライン化で明かになっただけでしょう。そしてオンライン授業を作るに当たって教員は自分の授業をもう一度客観的にみることができました。実はこれが一番のメリットなのかも知れません。
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