拡散方程式のこと(江頭教授)
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あなたが化学系の学生だったとしたら「波動方程式」について聞いたことがあるでしょう。では拡散方程式はどうでしょうか?私は化学系というよりも化学工学系の人間なので波動方程式よりも拡散方程式の方になじみがあります。今回は拡散方程式について紹介しましょう。
拡散方程式は拡散、つまり濃度の高いところから濃度の低いところに物質が移動するという現象、に関連した方程式です。とはいえ、拡散以外の現象にも関係しています。
先に述べた拡散についての説明「濃度の高いところから濃度の低いところに物質が移動する」を数式で表現したのが図のFickの法則の第1形式です。左辺のJは物質の流束(フラックスとも)で、「単位時間当たりに単位面積を通過する物質の移動量」です。これが濃度の勾配に比例する、という内容です。右辺にマイナスがついているのは「高いところから低いところに流れる」ことを表現しています。比例係数Dは拡散係数とよばれ、物質の拡散のし易さを表しています。
さて、この法則を書き換えたFickの法則の第2形式が今回のお題の「拡散方程式」です。
Fickの法則の第1形式は濃度の位置にたいする微分で表されていますが、第2形式は濃度の位置と時間に対する偏微分の関係を表しています。つまり第2形式は濃度の位置と時間に関する方程式、言い換えると濃度分布の時間発展についての方程式です。
さて、化学でおなじみの波動方程式は電子の密度(のようなもの)分布の時間発展についての方程式ですからよく似た形をしています。とはいえ大きな違いが一つ。波動方程式の左辺は濃度の時間についての二階の偏微分なのですが、拡散方程式ではここが一階になっているのです。
だから何、という気もします。でもこの違いが波動と拡散の違いに反映されています。拡散現象では時間がたつにつれて濃度分布は消えてゆき、最後は均一になります。一方で電子の波は変化はしても一定になってしまうことはありません。これが一階と二階の違いなのですが、どうしてそうなるのか、という理由についてはまた別途説明することとしましょう。
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