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書評 ファラデー原作「ロウソクの科学 世界一の先生が教える超おもしろい理科」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 こちらの記事で紹介したマイケル・ファラッド-の講演録「ロウソクの科学」ですが、そこで私は

実はこの本、ファラデーの口上はもれなく記録してるのですが実験に際して何が起こっているかの記述は本当に必要最小限のト書きしかないのです。(中略)前提としての知識のない子供にとってはいささかハードルが高いのではないでしょうか。

と書きました。

 同じようなことを考えた人はいるようで、実際にハードルを下げよう、というのがこちらの本

原作:ファラデー、文: 平野累次/冒険企画局、絵: 上地 優歩

「ロウソクの科学 世界一の先生が教える超おもしろい理科」

というわけです。

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 この本、外見や導入部分は柔らかい感じにして対象年齢の読者に手に取ってもらいやすい様に作られています。と、同時に内容はかなり本家「ロウソクの科学」に忠実です。もっとも「ステアリン酸」とか「ゲイ=リュサック」とかはさすがに省かれています。当時と現在とではロウソクの製法も異なっていますから、ここは本家「ロウソクの科学」を引用する形で、現在では「合成樹脂」からロウソクが作られる、と述べています。(いや、この「合成樹脂」という表現は微妙な気がしますが...。)

 さて、本書は「ロウソクの科学」という書物を、現在の子供達に受け入れ易いようにリニューアルする、という意味では正攻法な作り方がされていると思います。とはいうものの、本当にファラデーが子供達に見せていたのは「クリスマス休暇に、ロンドンの王立研究所で催された連続6回の公演」でした。その会場で子供達が見たであろう実験と同じもの、とは言いませんがそれに近いものを伝えられているか。そういう観点からすると、残念ながら少し迫力不足なのではないかとも思います。動画とはいいませんが、実際の実験の写真などがあればと感じてしまうのは少し贅沢が過ぎるでしょうか。

江頭 靖幸

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