推薦図書 ファラデー著 三石巌訳「ロウソクの科学」(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
「ロウソクの科学」は子供たちに科学への、というか化学への興味をもってもらうためにファラデー(あの、マイケル・ファラデーです)がおこなった実験つき講義を記録した本です。具体的には「1861年のクリスマス休暇に、ロンドンの王立研究所で催された連続6回の公演の記録である」と本書(角川文庫版)の「解説」(訳者、三石巌氏による)に記されています。
内容はタイトル通り、まずは1本のロウソクからスタートします。ロウソクが燃えるときに起こっている現象の細かい観察からスタートして燃焼という現象・化学反応についての説明に進みます。ロウが蒸発して可燃性のガスとなること、しかし燃焼するためには支燃性のガス、つまり酸素が必要なこと。酸素を含まない空気では炎が消えてしまうことを実験的に示してゆきます。またロウソクから生じるすすに注目して炭素の存在を示し、それが酸素と反応すること、反応して二酸化炭素を生じること。生物(ここではファラデー自身)の呼気には二酸化炭素が含まれていることなども示されます。カリウム金属を使った水素の発生、水素の燃焼から水が生じることなどいろいろな化学反応の実験を手品のように面白く見せてゆくのです。
と、まあ見てきたように書いているのですが、はて、当時この講演を聞いていた子供たち(とその親たち)はどのくらいこの講演の内容が理解できたのでしょうか。もっと気にかかるのは今現在この本を読む子供たちのこと。実はこの本、ファラデーの口上はもれなく記録してるのですが実験に際して何が起こっているかの記述は本当に必要最小限のト書きしかないのです。高校程度の化学の知識があれば何が行われているか、どんな変化が起こっているかを想像しながら読むことができるのですが、前提としての知識のない子供にとってはいささかハードルが高いのではないでしょうか。
実は私自身はこの「ロウソクの科学」を以前に読んでいます。あれは、高校生か中学生のころだったでしょうか。その時も今と同じ、ファラデーの口上からどんな反応が起こるのか、答え合わせをしながら読んでいたような記憶がありますから高校の化学の基礎的な部分は頭に入っていたのでしょう。ということは高校生1年生ごろでしょうか。その当時で既に「この本を読む子供たち」の気持ちを理解するには少し遅すぎだったようです。
「推薦図書」カテゴリの記事
- 世界の人々の暮らしがわかるWEBサイト「Dollar Street 」(江頭教授)(2019.02.21)
- 豊かな人、貧しい人-推薦図書「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」追記(江頭教授)(2019.02.14)
- 推薦図書 ハンス・ロスリングほか「FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」(江頭教授)(2019.02.12)
- 教科書「サステイナブル工学基礎」(江頭教授)(2018.04.16)
- 「安全工学」の講義 番外編(図書紹介)(片桐教授)(2018.03.19)