「水主火従」から「火主水従」に、と習ったものですが(江頭教授)
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私が中学生のころ、授業で日本の発電のエネルギー源について
昔は「水主火従」だったが今は「火主水従」である
と習ったものです。
「水主火従」とは「水力発電が主で火力発電が従」という言葉の省略形です。主と従は、まずは発電量の大小のことだと思ってよいでしょうが、別の意味もあります。水力発電は川などの水位の差を利用して発電する方式。「ゆく川の流れは絶え」ないので水力発電は常にほぼ同じ電力を発生させることになります。その一方で火力発電は人間が供給する化石燃料が動力源なのですから出力の制御ができます。その意味では「主」は昼夜を問わず同じ電力量を供給するための電源、いわゆるベースロード電源であり「従」は変動分、ピークロードに対応する電源という意味合いだということもできるでしょう。
単純に量という解釈だと1960年代には「水主火従」は「火主水従」に切り替わりました。これは別に水力発電が減ったわけではありません。電力に対するニーズがどんどん高まっていったため水力発電所をつくるための候補地が尽きてしまい、火力発電所を増設するしかなかったのです。
では「ベースロード電源」「ピークロード電源」という意味ではどうでしょうか?
詳しい情報を知っているわけではないので断定はできないのですが、1960年代より前が「水主火従」だったことは想像に難くありません。火力発電所の方が水力発電所よりもピークロードに対応しやすい、というのは納得できる話です。実際、燃料が必要な火力発電所を動かしたままで水力発電所の発電量を絞る、という運転は考えにくいところです。
では1960年代以降、電力への需要が高まって火力発電所が多く作られた後はどうなったのでしょうか。水力発電所で賄いきれなくなった「ベースロード電源」は新たに建設された火力発電所で対応したのでしょう。では増え続ける「ピークロード電源」のニーズに対してどう対応したのか。これもおそらくは火力発電所で対応するしかなかったと考えられます。水力発電所をわざわざ「ピークロード電源」様にシフトさせる道理はありません。
要するにこの意味での「水主火従」の次に来たのは「火主火従」だったわけですね。水力発電を「ピークロード電源」とする本当の意味での「火主水従」が実現するのは「揚水発電」の登場後ということになるのでしょうか。でも「揚水発電」は本当の意味では発電ではないのですが。
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